一部の進学校などを除き、ほとんどの文系受験生が学校で履修しない数3。履修していても、文系志望なら「入試で使わないからあまり勉強していない」「学校の授業を聞いているだけ」という人も多いのではないでしょうか。しかし、文系学部の中にも数3を利用して受験可能な大学や学部が存在します。受験戦略によっては、志望校に合格する可能性を高められるかもしれません。今回の記事では、穴場とも言われている、数3で受験できる文系学部のメリットとデメリット、代表的な大学を紹介します。特に、理系から文転しての受験を考えている生徒は要チェックです。数3を使って文系学部を受験するメリット「あえて数3を使って受験することにどんな意味があるの?」と思う人も多いでしょう。まずは、数3を使った受験のメリットをご紹介します。理系から文系に学部変更した生徒が受験しやすい理系から途中で文転した生徒は、多くの場合、それまで勉強していた科目とのギャップを埋めるため、国語や社会系科目の勉強がプラスして必要となります。数学を活かした受験ができる文系学部であれば、文転に伴って追加される勉強の負担を軽くしつつ、「今まで理系として数学に力を入れて勉強してきた」ことを活かした受験計画が立てられます。さまざまな事情で、理系学部から志望校が急遽変更になった場合でも、大きな負担なく受験することができますね。穴場になりやすい文系学部を志望していて数3を受験に利用する人はほとんどいません。受験以前に、数3を履修している人も少ないでしょう。したがって、「数3が必須となる文系学部」や「数3を使った受験枠」を志望する生徒の数も少なくなります。つまり、数3を利用した受験はそれ以外と比較して、合格者最低点や偏差値が低くなる傾向にあり、穴場になりやすいのです。例えば、東京都立大の経済経営学部(前期)や京都大学の経済学部(前期)は文系型でも理系型でも受験できますが、理系型のほうが2〜3ポイントほど偏差値が低くなっています。大学学部|学科日程偏差値合格最低点東京都立大学経済経営学部|経済経営(一般)前期62.3746.66/1110東京都立大学経済経営学部|経済経営(数理)前期60.3723.16/1110京都大学経済学部|経済経営文系前期71.2526.62/800京都大学経済学部|経済経営理系前期68.3562.91/900※ 記載の偏差値は、2024年9月時点で大手予備校各社が発表している偏差値を参考に平均を取った数値です。ただし、数3を利用した受験枠は募集人数も少ないケースが多く、倍率そのものが低くなることはあまりありません。募集人数が少ない分、合格ラインも変動しやすくなることに注意しましょう。特化した受験戦略によって逆転合格を狙える数3を利用する大学の中には、二次試験・個別試験が「数学のみ」または「数学と英語のみ」というところもあります(東京都立大の経済経営学部(数理区分前期)や、上智大学経済学部経営学科(TEAP利用理系)など)。国公立大学は、私立大学と比べると「複数の教科をきちんと学習しないと合格できない」と考えている受験生が多い印象ですが、数学を武器にできる受験生にとっては、戦略的に学習時間を数学に集中させることで、志望校合格の可能性を高められる入試形式があることを知っておきましょう。また、理系の私立大学を専願する予定だった受験生でも、少ない負担で国公立を受験できるともいえます。数3を使って文系学部を受験するデメリット数3を使った文系受験には、もちろんデメリットも存在します。メリットと比較して、自分にとってメリットとデメリットのどちらが大きいかを考えてみましょう。他の文系学部と併願がしにくい文系学部で数3を使った受験ができるのは、経済学部であることがほとんどです。その一番の大きなデメリットは、「他の文系学部と併願がしにくい」ということです。無理に他の学部と併願しようとすると、数3だけでなく、国語や地歴などの勉強もきちんとする必要があり、負担が激増してしまうため得策ではありません。その結果、どうしても受験機会が少なくなってしまうことは大きなリスクになります。自分の志望学部や併願学部を最初に確認し、数3を利用した受験が本当に自分に適しているかどうかを考えましょう。数学は得点が不安定になりやすい数学は、文系科目と比較すると得点が不安定になりやすい(=標準偏差が大きくなりやすい)傾向があります。これは、自分の得意な問題が出題されて高得点が取れる生徒もいれば、計算ミスや苦手な問題が出題されて全然得点できない受験生もいる、ということです。安定して高得点が取れるようになるには、しっかりとした実力が必要になってくるので、文系学部の数3受験をする場合は、十分な勉強時間を確保しましょう。数3を使って受験できる代表的な大学の文系学部数3を使って文系を受験できる大学には、どのようなものがあるのでしょうか。以下で代表的なものを紹介します。一橋大学経済学部(後期)ソーシャル・データサイエンス学部(後期)▶︎ 個別学力試験:数学・外国語一橋大学の後期試験では数3が出題されます。ただし、「数学3を学習していない受験生が不利にならないように、選択問題を用いる等配慮をする」とされているので、必ずしも数3ができなくてはならないというわけではありません。前期試験の東大受験生が流れてくることが多いため、受験者レベルは高いですが、どちらの学部も二次試験の数学・外国語だけで合計点の80%を占めています。初めから数学・外国語に完全特化して受験するというのも、場合によっては上手な受験戦略になります。東京都立大学経済経営学部 経済経営学科【数理区分】(前期)▶︎ 個別学力試験:数学・英語東京都立大学は、「数理区分」で経済経営学部を受験した場合、二次試験は数学と英語の2科目となります。またその場合、大学入学共通テストで選択できる理系科目は「物理」「化学」「生物」「地学」のうち1つとなり基礎科目での受験ができません。したがって、理系の生徒向きの受験形式です。また、東京都立大学は、令和6年度から年収910万円未満の世帯を対象に授業料を無償化するなど、学費面での魅力も多い大学です。興味がある人は調べてみてくださいね。京都大学総合人間学部(理系・前期)▶︎ 個別学力試験:国語・数学・物理/化学/生物/地学から2科目・外国語教育学部(理系・前期)▶︎ 個別学力試験:国語・数学・物理/化学/生物/地学から1科目・外国語経済学部(理系・前期)▶︎ 個別学力試験:国語・数学・英語総合人間学部・教育学部は文系学部の印象があるかもしれませんが、京都大学に限らず理系の受験形式がある大学は多く、その形式は完全に理系選択者向けです。さらに、経済学部は、理系型受験でも「共通テストでの理科は発展1科目のみ」「二次試験は国・数・英のみ」となっており勉強量の負担が軽めです。京都大学は共通テストの配点比率が低い入試が多く、二次試験の文系科目は、相当な学力がなければ差をつけにくいです。一方で、二次試験の数学は差がつきやすく、理系受験に関わらず数学が合否のカギを握ることが多いので注意しましょう。九州大学経済学部 経済工学科(前期)▶︎ 個別学力試験(前期):現代文・数学・英語経済学部経済工学科も文系学部ですが、ここは前期試験で「数学3が必須」となっています。「共通テストでも理科発展2科目が必要」となっており、理系選択者からの人気が高い学科です。神戸大学経済学部(数学受験・前期)▶︎ 個別学力試験:数学(1A 2B C)数3は使わないのですが、数学が得意な生徒や文転した生徒に向いているのが神戸大学の経済学部です。神戸大学の数学受験では、二次試験は数1A2BCのみとなります。標準的な良問が多く、二次試験で高得点を取ることも十分可能です。配点比率も50%あるので、共通テストの失敗を二次試験の数学だけで逆転できる可能性があるのは、大きな魅力です。上智大学経済学部 経済学科(理系・TEAP利用)上智大学のTEAP利用試験では、外国語の外部検定試験と数学のみで受験が可能です。外部検定試験後は数学の勉強に集中できるため、「狙い撃ち受験」に向いています。同志社大学文化情報学部(全学部日程理系)スポーツ健康科学部(全学部日程理系)心理学部(全学部日程理系)同志社大学は、珍しく経済学部以外を数3利用で受験できる大学です。必要科目は「数学・物理/化学/生物から1つ・外国語」の3科目。全学部日程は地方受験の開催地も多いため、受験しやすいでしょう。数3を利用した文系学部受験はメリットとデメリットをよく考えようご紹介したように、文系学部の数学受験には、メリットだけでなくデメリットもあります。しかし、学力特性や学習状況によっては、志望校に逆転合格できる可能性を見出せる選択肢になることも。闇雲に勉強するのではなく、まずはさまざまな入試形式があることを知りましょう。本記事が、志望校の入試形式を調べるきっかけのひとつになれば幸いです。あなたに最適な受験戦略をオーダーメイドで作成大学の入試形式や出題傾向は多種多様。インターネット上にたくさんの情報があるものの、それをどのように調べればいいのか、どのように勉強すればいいのかわからずに困っている受験生が後を絶ちません。このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度スタディカルテLabにご相談ください。毎週最大5名様まで、30分の無料学習相談を受付中です。スタディカルテLabでは、丁寧な分析に基づいて、専門の学習プランナーが1人ひとりの学習状況を踏まえた相性の良い受験校選びのサポートをおこなっています。「志望校に合格するための最適な学習プラン」を学習プランナーがオーダーメイドで作成します。あなただけの最短距離を見つけられるので、志望校合格に向かって効率良く勉強を進められます。進路や学習に関するご相談があれば、LINEからお気軽にお声がけください。