小論文入試に対して、なんとなく難しそうと不安を感じている高校生や受験生も多いのではないでしょうか?今回は、旧帝大や医学部への合格実績豊富な実力派講師でありながら、現役の国語教育研究者でもある佐藤宗大講師に、大学受験における小論文の書き方についてアドバイスをお聞きしました。「小論文なんて怖くない!」と語る佐藤講師。その理由とは?小論文に苦手意識がある方こそ、ぜひ読んでみてください。だんだん、「自分にも書けそうだ!」と思えてくるかもしれませんよ。▶︎ 佐藤宗大講師のプロフィールはこちら「小論文なんて怖くない」と言い切れる3つの理由いわゆる難関大や医学系の大学・学科だったり、あるいは推薦入試・総合型選抜だったりと、「狭き門」で課されている場合が多い小論文入試。だから、小論文入試は「難しい」と思われがち…。しかし、はっきり言ってそれは「誤解」です。そして、それを「誤解」だと言い切れるだけの理由もあるのです。3つの理由を詳しくみていきましょう。1. 自分の持っている経験や知識を使って書けばいい「小論文」という言葉をみると、「論文」なんだからやっぱり「ちゃんとした」ものを書かないといけないのでは……と感じてしまう人が多くいます。もちろんある程度「ちゃんと」している必要はあるのですが、しかしそれは「文章のプロとして恥ずかしくないものを出せ」ということではありません。そもそもみなさんは「文章のプロ」じゃないんですから、時間内に、自分の手持ちの経験や知識を駆使して、条件に即した文章をまとめられればそれでいいのです。「小論文」は英語でessay、つまり「エッセイ」です。素材はすでに自分の中に眠っています。気負わずに、自分の持っている素材を起こして揃えてあげれば大丈夫です。2. 「立派なこと」ではなく、「整然としたこと」を述べればいい小論文入試で求められているのは「条件に即して」「自分の意見を整然とまとめられる」ということであって、「全くスキがなく理想的で独創的な意見を披露すること」ではありません。極端なことを言えば、「読みやすく」「伝わりやすい」ことにこそ、一番気を配るべきです。しかし、これは「見た目が整っていればそれで良い」ということではありません。例えば、みなさんが将来、医療系の仕事に就いたとしましょう。その時、もし患者の状況や医療プランについて、分かりやすく端的にまとめられなかったら、現場や同僚たちはどうなるでしょうか。大学が「入試」でその能力を問うていることには、十分意味があるのです。3. 実は、文字数が少ないうえに時間はたっぷりあるはあ?というみなさんの声が聞こえてきそうですが……実際その通りなのです。おおよその傾向ですが、一般的な入試小論文の文字数は800字前後がボリュームゾーンで、時間は1時間程度。1000字レベルになると90分~2時間は与えられるので、基本は「1時間で800字の文章をまとめられるようにする」と考えればたいていの大学には対応できます(し、実際そうやって指導してきて合格を掴み取ってきました)。問題はこの「800字」という字数です。多いように感じるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?さきほど 1. のところで、「自分の経験や知識を使って書けばいい」と述べました。例えば、「部活で頑張ったこと」や「自分の好きなもの」について友達や知り合いとしゃべると考えてみてください。一般的なスピーチの目安が1分間で300文字程度と言われているので、3分もしゃべっていれば、あっという間に800字を超えることになります。それを 2. で示したように条件にしたがって整理すれば、それで「小論文」はできあがるのです。そう思ったら、「1時間で800字」というのは、適切な戦略のもとにトレーニングをつめば「できないことはない」、いやむしろ「できるようになる」目標に見えてきませんか?では問題は、「適切な戦略」とは何かということ。次はそれについてお話ししましょう。「1時間で800字」が怖くなくなる3ステップ1. 「聞かれていること」が何なのかをしっかり受け取ろう当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、それをあえて大前提として言うことにも意味があります。医学部の出題パターンとして多いのが、「題材文の言っていることをもとに、自分の意見を述べよ」というもの。つまりこれは「題材文が何を言っているかをまずは整理してみせてください」ということです。この条件を見落としてしまうと、二重の意味でまずいです。まず第1に、「私は人の話をきちんと聞くことができない人間です」というアピールになってしまいます。そして第2に、「題材文が言っていること」を整理するだけで80字前後は文字数を処理することができるのに、それをみすみす逃すことになります(もちろん、600字あって要約に400字も使ってたらそれはそれでまずいですが。それは要約でも何でもないですよね)。繰り返しになりますが、入試は大学からのメッセージ。現場で必要なのは、相手の言っていることや情報をきちんと受け取り、整理することができる人間であることを忘れないようにしましょう。2. まずはネタ出しのメモをしっかり作ろう「長い文章なんて書けないよう……」という人は、たいてい「文章というのはスラスラと一気に書けなければいけないのだ」と勘違いをしています。断言します。そんなことは絶対ありません。なぜなら、小論文は「インスピレーション」や「センス」で書くものではないからです。小論文というのは、むしろ積み木遊びのようなものと考えてみてください。目の前にあるブロック(=自分の経験や知識)を、作りたいかたち(=与えられた条件)に即して、どう組み立てるか。とすれば、まずは使えるブロックがどんなものかを確かめておかなければなりませんね。本番の問題用紙にだって余白はあります。落書きで気を紛らわせるのもいいけれど、せっかくなら有効活用していきましょう。3. 「ストーリー」を組み立てて書き進めようブロックが出揃ったら、次は、それを「どう組み立てるか」です。バランスが悪ければ崩れてしまうし、きれいに「書けて」いても条件に従っていなければ意味がありません。みなさんの語る言葉にはそれぞれ意味も価値もあるけれど、これはいわば文章を通した面接。言葉にも「スーツ」を着せてあげましょう。言葉の「スーツ」は基本的には【はじめ】 – 【なか】 – 【おわり】という形式を取ります。学校でも聞いたことがあるでしょう。文字数と合わせて、具体的にはこんな感じの構造をイメージしてみてください。【はじめ】:テーマに対する自分の考えを、1文で表現する。(30〜40字程度)慣れないうちは、「私は……と考える。」と、まずは機械的に書き出すようにしてもいいです。大事なのは「書く手を止めない」こと。【なか】:主張をサポートする根拠や具体例を示す。(数百字前後)ここが小論文の「本丸」です。ここをどう整理する/ふくらませるかが、小論文マスターへのカギになります。出題パターンによってここの構成はいろいろ変わってきますが、ここでは基本の「あなたの考えを述べよ」系を念頭に置いて解説します。【なか】についても、慣れないうちは、「理由は2つある。第1に、……。[その補足説明]。第2に、……。[その補足説明]。」と機械的に書いてしまいましょう。全体で600〜800字であれば、理由2つぐらいがちょうどいいボリュームでしょう。つまり、「理由+補足説明」の分量の目安は200〜250字程度と考えればOKです。250字って結構あるじゃん……と思ったかもしれません。しかし多くの場合、「補足説明」の部分は部活での出来事や生活の中で感じたことなどを使って書くことが求められます。そして先ほども言ったように、人に伝わりやすいスピードで1分間話しておおよそ300字くらいになります。そう考えれば、むしろ「余裕で書ける」分量に思えてきませんか?余裕があれば、【はじめ】で述べた主張に対する反論を想定して、それに再反論してみてもいいでしょう。ここで使えるのが、以下に示す「譲歩構文」です。「一方で、○○という意見もある。しかし、[自分の意見を再サポートする説明]。」評論文などで見たことがある、という人も多いのではないでしょうか。これが小論文で使えると、なかなかにかっこいいですよね。「いろんな立場があることをわかっているな」という、採点者へのアピールにもなります。目安は200字程度です。【おわり】:最後に自分の主張をもう一度繰り返して文章を閉じる。(40〜50字程度)ここは【はじめ】の文章をほぼそのまま繰り返して構いません。慣れないうちは、「以上の理由から、私は……と考える。」と、機械的に書いてしまいましょう。以上の通りに構成を考えて手を動かしてみると、はじめ(40字)+なか(250字×2+200字[譲歩構文])+おわり(50字)=790字なんと自動的に800字程度の文章ができあがっている、というしかけです。どうでしょうか、なんかできそうな気になってきませんか?最後はプロによる添削で仕上げを小論文が書けたら、最後は学校や塾の先生などに必ず添削をしてもらうのがおすすめです。「読みやすく」「伝わりやすい」内容になっているか、客観的に確認してもらいましょう。スタディカルテLabには佐藤講師の他、国語や小論文の指導に長けている実力派講師が複数名在籍しています。小論文対策に不安がある、本格的な対策はこれから、といった方はぜひお気軽にご相談ください。▼ スタディカルテLabのプロ講師による小論文対策はこちら