ご存知の通り、学習指導要領が2022年度に改訂されたことに伴い、2022年度に高校に入学した学年の入試(=2025年度入試)からは、新課程に対応した入試が開始されます。本記事では、新課程の概要を確認するとともに、2025年度から開始される新課程入試のポイントや、浪人生・再受験生向けの移行措置についても情報をまとめています。2025年度以降の入試を受験される方はぜひ参考にしてください。新学習指導要領で何が変わったか2025年度に開始する新課程入試について理解するために、まずは、2022年度からの新学習指導要領について見ていきましょう。今回改訂された学習指導要領は、日々変化する時代の中を子どもたちが生き抜いていくための教育に焦点を当てています。キーワードは、「三つの柱」です。学びに向かう力、人間性など知識及び技能思考力、判断力、表現力などこれら「三つの柱」を軸に、社会に出てからも応用可能な能力の獲得を目標としています。上記の方針に基づいて、高校教育においては全科目を通して、主体的・対話的で深い学びを重視するカリキュラムが組まれています。また、「情報Ⅰ」でプログラミング教育が必修化、新たに「理数」教科が誕生するなど、複数の教科において内容や構成の見直し、教育カリキュラムの再編成がおこなわれました。▼ 新学習指導要領(一覧)続いて、主要5科目の詳細を見ていきましょう。新学習指導要領【英語】新課程の英語では、「英語コミュニケーション」の時間に、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」の5つの領域を総合的に身につけます。また、発信力の強化に特化した科目として、「論理・表現」が新設されました。全体を通して、英語で情報や考えを的確に掴む力や、実際にコミュニケーションを取るための技能を養うことに重きが置かれています。新学習指導要領【国語】新課程の国語では、これまでの「国語総合」に代わって、「現代の国語」と「言語文化」の2科目が必修となりました。「現代の国語」は、主に実社会に活きる知識や技能を身につけることを目標とする科目で、「言語文化」は、自国の言語文化に対する理解を深めるために新設された科目です。「言語文化」では主に古文と漢文を学習します。新学習指導要領【数学】新課程の数学では、主に「数学B」と「数学Ⅲ」の一部の内容が移行する形で、「数学C」が新設された点が大きな変更点です。仮説検定の考え方や、統計的な推測など、統計学的な内容が充実されています。また、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を育み、創造的な力を高めることを目指して、新たに「理数」という教科が設けられました。新学習指導要領【理科】理科については、科目の構成にはあまり変化がありませんが、学習内容に一部変更があります。例えば化学では、「核酸の構造」の項目が削除されたほか、「熱化学方程式」の文言が削除され、反応熱についてはエンタルピー変化とエントロピーで表す形に変更されました。他の科目についても、基礎科目と上位科目間でカリキュラム内容の移行や再編成がおこなわれています。新学習指導要領【社会】新課程の社会では、地理と歴史のカリキュラムが再編されました。「地理総合」と「歴史総合」が新設され、いずれも必修科目となっています。また、社会の一員として活動するためのさまざまな力を養うことを目的に、「公共」という科目が必修科目として新設されました。新学習指導要領【情報】新課程の情報では、必修科目として「情報Ⅰ」が新設されました。プログラミングの基礎だけでなく、ネットワークやデータベース(データ活用)の基礎などを学びます。データサイエンスに関係する内容も充実しました。新課程で大学入学共通テストはどう変わる?上記の新学習指導要領を背景に、2025年1月に実施される共通テストから、新教科「情報」を加えた7教科21科目での実施となります。科目ごとの大きな変更点は以下の通りです。2025年度共通テスト【国語】国語は現代文に大問が1題追加されます。試験時間は変更前より10分長く、90分になります。配点は現代文が110点(45点、45点、20点)、古典が90点(古文45点、漢文45点)に変更となる予定です。2022年11月に公表された試作問題の新設第3問は、複数の図表・グラフと文章をもとにレポートを作成する、という内容でした。時間配分を間違えると大きな失点につながるので、各大問ごとにどのくらいの時間を割くべきか考えて問題演習をしておくと良いでしょう。2025年度共通テスト【数学】数学①「数学Ⅰ,数学A」は、試験時間には変更がなく70分です。ただし、学習指導要領の変更によって、「整数の性質」は「数学と人間の活動」に移行されました。この変更に伴い、「図形の性質」と「場合の数と確率」の2項目が必須解答となっています。数学②は「数学Ⅱ,数学B,数学C」に変更となります。試験時間はこれまで「数学Ⅱ,数学B」では60分でしたが、10分長くなり、70分になります。「数学Ⅱ,数学B,数学C」のうち、数学Bの「数列」「統計的な推測」 数学Cの「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の4項目から、3項目を選択して解答する形式になる予定です。2025年度共通テスト【理科】共通テストの理科に関しては、出題方式などに大きな変更はありません。試験時間は1科目選択で60分、2科目選択で130分(うち解答時間120分)です。2025年度共通テスト【社会】社会は、以下の全6科目の中から最大2科目を選択して受験します。試験時間は1科目選択で60分、2科目選択で130分(うち解答時間120分)です。「地理総合,地理探究」「歴史総合,日本史探究」「歴史総合,世界史探究」「地理総合/歴史総合/公共(いずれか2科目)」「公共,倫理」「公共,政治・経済」ただし、2科目選択の場合は、選択できない組み合わせがあるので注意が必要です。詳しくは以下の表をご確認ください。また、共通テストの「歴史総合」については、以下の記事もぜひご参考ください。▶︎ 新科目「歴史総合」で、共通テストはこう変わる —ポイントは近現代史—2025年度共通テスト【情報】今回、「情報Ⅰ」の必修化に伴い、新たな出題教科として「情報」が追加されました。試験時間は60分、配点は100点です。共通テストの「情報Ⅰ」について、詳しくは以下の記事もご参考ください。▶︎ 「情報Ⅰ」の必修化で、大学受験はどう変わる? 共通テスト試作問題からわかること旧課程履修者は要チェック! 経過措置について2025年度の大学入学共通テストでは、旧教育課程履修者を対象に経過措置が用意されています。新課程を履修していない受験生については、地理歴史、公民、数学、情報において、旧課程科目を受験することができます。以下の記事も合わせてご参考ください。▶︎ 浪人生・既卒生(旧課程履修者)向け【新課程入試】経過措置と受験科目の注意点社会に関しては、問題冊子が新課程用と旧課程用で別となるため、旧課程履修者は出願時にいずれの問題冊子を希望するかを登録しておく必要があります。数学に関しては、旧課程履修者は試験当日に、新課程科目と旧課程科目のいずれかを選択して解答することが可能です。旧課程を選択する場合は、従来通り数学①は、場合の数と確率、整数の性質、図形の性質から2項目を、数学②では、数列、ベクトル、確率分布と統計的な推測から2項目を選択して解答する形式となる予定です。原則、「情報」は全員受験2025年度以降の共通テストでは、旧課程履修者でも原則「情報」の受験が必要です。旧課程の履修者のみ、試験当日に「情報Ⅰ」または「旧情報」のいずれかの科目を選択できます。旧課程履修者の場合、「旧情報」の対策をしていない人が多いと思われます。状況によっては「旧情報」ではなく、「情報Ⅰ」を受験するつもりでこれから勉強を始めるのも方法のひとつです。「情報Ⅰ」のほうが、参考書や問題集が豊富に出版されていますので、対策に取り組みやすいと思われます。試行問題や参考書、志望校の募集要項や配点も確認した上で、どちらで受験するかを検討しておきましょう。新旧科目間でも得点調整がある2025年度の大学入学共通テストにおいては、旧課程履修者に対する経過措置として、新旧科目間でも得点調整の対象となることになりました。※ 得点調整について従来より、特定の教科の中で科目間の平均点に著しい差が生じた場合、得点調整を実施することがあります。得点調整の実施条件は以下の2点です。・科目間で20点以上の平均点差が生じた場合・15点以上の平均点差が生じ、かつ、段階表示の区分点差が20点以上生じた場合新旧科目を含む得点対象となる科目は、以下をご覧ください。地理歴史の「地理総合,地理探究」「歴史総合,日本史探究」「歴史総合,世界史探究」「旧世界史B」「旧日本史B」「旧地理B」の間公民の「公共,倫理」「公共,政治・経済」「旧現代社会」「旧倫理」「旧政治・経済」「旧倫理,旧政治・経済」の間数学①の「数学Ⅰ,数学A」と「旧数学Ⅰ・旧数学A」の間数学②の「数学Ⅱ,数学B,数学C」と「旧数学Ⅱ・旧数学B」の間理科の「物理」「化学」「生物」「地学」の間情報の「情報Ⅰ」と「旧情報」の間上記1〜5については、受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象外となります。6の「情報Ⅰ」と「旧情報」の間については、いずれかの受験者数が1万人未満であっても得点調整の対象になるとされています。新課程入試に不安……確かな情報をもとに早めの対策を本記事では、新課程入試のスタートに伴うさまざまな変更点について、主要な内容をまとめました。今後の受験勉強の参考にしていただければと思います。「経過措置があるが、新課程と旧課程のどちらを受験するべきか迷っている。それぞれのメリット・デメリットを教えてほしい」「情報にはいつから取り組めばいいか? 優先順位がわからない。配点は低くても対策はしておきたい。」などなど、大きな変化を前に、不安を抱えている受験生は少なくありません。忙しい中、自分ひとりで入試情報をリサーチするにも、かなりの時間がかかります。そんなときは、大学受験に精通しているプロに相談するのもひとつの手です。スタディカルテLabでは、丁寧なヒアリングをもとに、ひとりひとりの学習状況に合わせて、学習計画の立て方や、優先順位のつけ方、勉強の進め方などをアドバイスしています。新課程入試の対策や受験に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度スタディカルテLabにご相談ください。毎週最大5名様まで、30分の無料学習相談を受付中です。