国公立大学・私立大学を問わず、ほとんどの大学の医学部入試では、個別学力試験において面接試験が課されています。面接試験は、大学側が受験生の人間性や適性を評価する重要な機会です。面接試験に配点がある大学や、学科試験の点数と面接を総合的に評価する大学など、その形式はさまざまですが、多かれ少なかれ面接の結果は合否に影響するため、医学部受験生は学力試験の対策とあわせて面接試験の対策が必要です。本記事では、面接対策に精通する辻野講師に伺ったアドバイスをもとに、効果的な面接対策のポイントと戦略を解説します。面接試験に向けてしっかりと対策したい受験生の参考になれば幸いです。▶︎ 辻野伸一講師のプロフィールはこちらまた、スタディカルテIntelligenceのLINEに登録していただいた方には、「医学部面接でよく聞かれる質問リスト50選」をプレゼントしています。こちらもぜひご活用ください。ご希望の方は、LINEで「面接質問リスト」とメッセージをお送りください。定番質問への事前準備は徹底的に!医学部の面接試験の形式は大学によって異なり、「個人面接」「集団面接」「グループディスカッション(集団討論)」「MMI(Multiple Mini Interview)」などさまざまです。志望する大学の面接はどのような形式で実施されるか、事前に調べておきましょう。とはいえ、「志望理由」や「医師になりたい理由」などの定番質問は、ほとんどの大学の医学部面接で聞かれます。これらのようなベーシックな質問については、事前に自分の考えを整理し、自信を持って答えられるよう、徹底的に準備しておきましょう。定番質問① 大学への志望動機「大学への志望動機」を整理するにあたっては、事前にその大学について徹底的に情報収集し、数ある医学部の中でなぜその大学を選んだのかを明確にしておく必要があります。そして、その選んだ理由を、熱意を込めて面接官に伝えることが大切です。必ず、大学のHPなどで「アドミッション・ポリシー」や「求める人物像」を確認してください。可能であればオープンキャンパスなどにも積極的に参加しておき、実際に大学に訪れた際のエピソードを交えながら話すことができると、より気持ちが伝えやすいでしょう。定番質問② 医師になりたい理由「医師になりたい理由」も医学部の面接でよく聞かれる質問のひとつです。幼少期のエピソードなど、医師になりたいと思うようになったきっかけを具体的に説明できるようにしておきましょう。なりたい理由から派生して、「理想の医師像」や「医師になってやりたいこと」を尋ねられる場合もあるので、わかりやすく説明できるように経緯や考えを整理しておきましょう。自分のこれまでの経験が将来の目標とどのように結びつくかを示すことができると、説得力のある回答になります。面接はエネルギーの測り合い?本番時のポイントとは上記のように、面接で受け答えする内容はもちろん重要ですが、言葉以外の要素(ノンバーバル・コミュニケーション)も決して軽視してはいけません。これまで多くの受験生の面接指導をおこなってきた辻野講師は、「面接は人のエネルギーの測り合い」だと語ります。同じ内容でも、誰が(どんな人が)言うかで、その印象は大きく異なるというのです。医学部受験生が、本番の限られた時間の中で、面接官に最大限のエネルギーを伝えるためには、どうすればいいのでしょうか?そして、どのようなトレーニングや練習が必要なのでしょうか?続いては、面接で外してはいけないポイントや、人間の心理効果を利用した対策方法について、辻野講師にアドバイスいただいた内容をもとに、面接本番の流れに沿って解説します。① 入室〜着席まで面接では「何を言うか」も大事ですが、「誰が言うか」も非常に重要です。“第一印象は3秒で決まる” “第一印象が9割” などのフレーズを目にしたことがあるかと思いますが、言わずもがな、第一印象は面接の評価に大きな影響を与えます。これは「ハロー効果」と呼ばれる心理的な現象であり、「一部の目立った印象が良い場合、その印象に影響されて全体としての評価も好意的に寄る」ということが起こりえるのです。この心理現象を利用して、まずは入室から着席するまでの一瞬の間で、面接官の「良いところ探しスイッチ」を入れてしまいましょう。入室してすぐに、面接官に「この受験生はなんだか素敵だ!」というバイアスをかけることができれば、その後は面接官が自動的に「良いところ探しゲーム」を始めてくれます。とても有利な状況で面接試験を進められることになりますね!入室〜着席までのポイントは、以下の3点です。◆ 笑顔入室したらまずは、前歯が見えるくらいの笑顔で面接官とアイコンタクトをします。挨拶をする際は、声のトーンを高くすることも意識しましょう。◆ ゆっくり動く多くの受験生は、緊張して焦ってしまい、動きが速くなりがちです。ゆったりとした余裕のある動きを心がけましょう。卒業証書を受け取りに行く時や、着物を着ている時をイメージしてみてください。◆ 礼首と背中のラインをまっすぐに伸ばし、胸から落とす礼をするだけで、お辞儀の完成度は格段に上がります。頭を下げた時に一度動きを止め、上げるときはさらにゆっくり動きましょう。そして顔を上げた時に笑顔を見せると、爽やかで礼儀正しい印象を与えることができるはずです。② 面接中質疑応答のポイントは2点、「話す内容」と「話しているときの印象」です。◆ 話す内容質問への回答は、PREP法を用いて簡潔に答えるよう意識しましょう。PREP法とは、「結論(Point)」「理由(Reason)」「具体例(Example)」「結論(Point)」の順で話すこと。事前に想定される定番質問に対しては、この流れに沿って回答を用意しておきましょう。対策時のポイントは、答えを丸暗記するのではなく、早口で口ずさむ練習をすることです。早口での発声に慣れておくと、普通のスピードで回答することが簡単に感じるようになります。よく聞かれる質問に関しては、回答例を何度も何度も口ずさみ、口からすらすら出る状態にしておいてください。面接試験本番は、面接官の表情などを見ながら、自信を持ってゆっくり丁寧に話しましょう。なお、1分を超えて話し続けると、聞き手は「長くて疲れる」という印象を受けてしまいます。端的に回答することを心がけましょう。◆ 話している時の印象面接官は実のところ、受験生が話している内容以上に、声のトーンや表情などを見ています。声や表情から、人柄のイメージや自信がある様子が感じ取れるためです。そのため、言葉や内容以外の部分をどう演出するか、ということも非常に重要です。以下に、絶対に手を離してはいけないハンドル2つについて、詳しく解説します。1つ目は、「声のトーンのハンドル」です。例えば、想定していなかった質問をされた時に、急にしどろもどろになって声のトーンが変わってしまったとすると、面接官に自信のなさが伝わってしまいますよね。したがって、どんな時でも(例え、想定外の質問に内心はハラハラしているとしても、)声のトーンのハンドルからは決して手を離さずに、明るく話すことを心がけましょう。質問に答える前に「はい!」と返事をするだけでも、凛とした印象を与えることができますよ。2つ目は、「表情のハンドル」です。人間は、相手の表情や非言語の部分を通して、本能的に相手が敵か味方かを判断すると言われています。いろいろな人の模擬面接の動画を、音を消した状態で見ると、非言語の部分で受け取る印象がいかに変わるのかが実感できます。おそらく、表情が豊かな人や身振りが大きい人の方が魅力的に見えるのではないでしょうか。にこやかな笑顔で話す受験生は、それだけで面接官にプラスの印象を与えられるでしょう。▲ (左)真顔でボソボソ話すイメージ (右)にこやかな笑顔で話すイメージ 一瞬の表情だけでも、印象が大きく異なることがわかりますね。たとえ、質問の回答内容で多少失敗したとしても、トータルの印象が良ければ合格することも少なくありません。面接は、面接官にどれほど好印象を与えられるかの勝負です。質疑応答の中身だけで戦うのは非常にもったいないと言えます。声のトーンと表情の他にも、姿勢や態度、清潔感のある格好など、人間の本能的に印象づけられる非言語要素は全て、面接官から見て好意的に映るように作り上げていきましょう。③ 面接の最後に「ピーク・エンドの法則」という、心理学者が提唱した法則があります。ある出来事に対して、感情が最も高まったピークの時の印象と、終わり(エンド)の印象だけで、人は全体的な印象を判断するというものです。つまり、面接の最後は、面接官に改めて印象を残すチャンスです。質疑応答が一通り終わったら、最後に、面接官に感謝の意を表すとともに、自分の強い意志や熱意を再度伝えましょう。礼儀正しく、笑顔で明るい印象を残すことができると良いでしょう。あるいは、最後だけはあえて笑顔を消し、真剣な声のトーンで意気込みを語ると、さらに強いインパクトを残すことができるかもしれません。言葉や表情を含めた全身で、「この学校で学びたいという気持ちは誰にも負けない!」という強いエネルギーを面接官にぶつけて、面接を終えましょう。こういう時はどうする? 面接対策FAQ予想していなかった質問、答えにくい質問、こんなときどうしよう!?面接に臨む際に把握しておきたい心構えや対処方法をご紹介します。予期せぬ質問にはどう対応したらいい?医学部の面接では、想定外の内容を質問されることもあります。そのような時に慌てず対処できるよう、面接前に “お守り” を2つ持っておきましょう。1つ目のお守りは、「はい!10秒いただいて良いですか」。何とか答えられそうな内容であれば、少しだけ考える時間をもらい、頭の中で情報を整理してから落ち着いて答えましょう。2つ目のお守りは、「はい!今の私の力ではお答えできそうにありません。また調べたいと思います、以上です!」。考えてもどうしても答えられないと感じた質問は、爽やかに、正直な返事をすることもひとつの手段です。慌てておどおどした姿を見せるよりも、印象を崩さずに乗り切る方がプラスに受け取られる場合もありますよ。想定外の質問を恐れるのではなく、落ち着いて冷静に対応することが大切です。これら2つのお守りを最終手段として用意しておき、面接本番は堂々と自信を持って臨みましょう。全く知らないことについて聞かれた時はどう答えるのが正解?上述のとおり、知らないことは正直に答えて問題ありません。しどろもどろに回答するより、笑顔で爽やかに「知らない」と答えた方が、かえって印象が良い場合もあります。もし失敗したとしても、「人間味を出せた!」とポジティブに捉え、その後のリカバリーに集中しましょう。ご存知のとおり、医学部面接では、直近の医療ニュースに関することや、地域の医療課題に関する内容についても質問されやすい傾向にあります。話題になっている医療知識や関連ニュースは日頃からチェックし、面接に向けて改めて確認しておくようにしましょう。普段から物静かなタイプなんです……笑顔で爽やかに、と言われても、そんなの自分のキャラじゃないんです……。と思う方も少なくないかもしれません。しかしながら、非言語部分からも情熱や思いを感じ取ってもらうためには、面接前の1週間ほどは今までと違う自分を演じて過ごすことをおすすめします。例えば、背筋を伸ばす・口角を上げる・身振り手振りを交える・張りのある声で喋るなど、ほんの少しのチューニングで印象は変わります。家族や友人から「なんか気持ち悪い!」と言われたら、変わってきた証拠。そのくらい大袈裟な方が、面接ではちょうど良いとも言われます。面接を意識した行動を日常生活に取り入れることで、面接本番でも自然に振る舞うことができますよ。服装や髪型はどうしたらいい?服装も髪型も、清潔感が大切です。基本的には、高校生は制服を、既卒生はスーツを着て面接に臨むようにしましょう。ただし、一部の大学においては、現役生の制服着用を禁止している大学もあるため、事前に募集要項を確認しておきましょう。髪型に関しても、長い髪はまとめておく、おでこを出すなど、清潔感のある髪型にしておきましょう。併願校についてどこまで正直に言えばいい?面接を受ける時は、“この大学が第一志望の受験生” になりきることをおすすめします。関心のある領域や研究室など、受験校について徹底的に調べた上で面接に臨みましょう。例えば、アイドルのファンに話を聞くと、数分話しただけでも、その人がどれほどそのアイドルを好きなのか伝わってきますよね。人が本当に好きなものについて語る時、短時間でも聞き手はその熱量を受け取ることができます。面接でも同じです。その大学が大好きな受験生を俳優として演じ切ることで、面接官に熱意を届けましょう。面接官が怖い人だったらどうしよう……面接官といっても、結局は受験生と同じ人間です。目の前の人間の感情をどう動かすかを意識し、面接官を味方につけることを狙って、堂々と構えましょう。定番質問への準備、声のトーン、表情、姿勢など、これまでお伝えしてきた面接のポイントやテクニックを駆使して、面接官の感情を動かす技を身につけてください。あとは練習あるのみです!面接は練習で上達できる! 志望校に合わせた徹底的な面接対策を辻野講師曰く、「面接はスポーツと同じ」。練習によって必ず上達するものです。学校や塾の先生などの第三者から客観的なフィードバックを受けながら、100本ノックのつもりで徹底的に練習しましょう。スタディカルテLabでは、辻野講師をはじめ、面接対策に精通した講師が多く在籍しています。医学部の面接対策に不安がある方はぜひスタディカルテLabにご相談ください。▼ 面接対策に強いプロ講師が伝授!スタディカルテLabの面接対策はこちら料金1回90分 ¥15,000(税込) ※具体的な日時は講師と調整の上決定します。回数1回 / 2回 / 3回 から選択可能形式Zoomでのオンライン個別指導対象高3 または 既卒生内容プロ講師が、面接時の動作や答え方についてアドバイスし、心構えを伝授します。申込方法スタディカルテLabのLINEを登録し、メッセージで「面接対策希望」とお送りください。また、現在スタディカルテInteligenceのLINEをご登録の方には、【医学部面接でよく聞かれる質問リスト50】をプレゼントしています。質問リストをご希望の方は、LINEのメッセージで「面接質問リスト」とお送りください。面接を控えている医学部受験生や保護者の方にお役立ていただけたら幸いです。