過去問や情報が少なく、出願条件も大学によって異なる帰国生入試での大学受験。「自分が目指す方向に進学するために、何をしたらいいのかわからない」という帰国子女の方も多いのではないでしょうか。帰国生入試においては、早めの情報収集と方針決定が鍵を握ります。実は海外に在住していても帰国生入試を受けられない場合や、一般選抜で大学を受験したほうがよい場合もあり、よく調べて検討する必要があります。「帰国生入試を受験するべきか、一般選抜を受験するべきか?」「志望校合格のために、どんなスケジュールで何をするべきか?」といった疑問をお持ちの方に、本記事が参考になれば幸いです。※「帰国生入試か一般選抜かで迷っている」「一般選抜での大学受験を考えている」といった方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。▶︎ 大学受験で一般選抜を選ぶ帰国生が乗り越えるべき壁とその対策帰国生入試とは?概要とスケジュール大学受験における帰国生入試は、一般入試とどのように違うのでしょうか。帰国生入試の対象者やメリット・デメリットを把握しておきましょう。帰国生入試の対象者大学受験において、帰国生入試の出願条件は大学・学部によって異なります。ただし、多くの場合は以下の条件が課されています。(日本にいた頃を含め)トータルで12年間の学校教育を受けていることそのうち最終学年を含め2年以上外国で教育を受け、卒業していること(一部の大学では卒業していなくてもよいケースもあります)卒業後の年数が2年未満であること滞在国の統一試験(※)、あるいはTOEFL® iBTなどのスコアの提出※ その国の大学へ進学する際に受験する学力試験のこと。例えばアメリカにおけるSAT(Scholastic Assessment Test)が該当する。飛び級や生まれ月の関係などで早く学校教育が終わった場合でも、18歳になるまでは出願できない場合もあります。また、「自分の意志で海外の学校に通った人」と「親の仕事の都合などで海外の学校に通った人(いわゆる帰国子女)」で、受験資格や枠が異なる大学も。気になる大学がある場合や判断がつかない場合は、入試要項を参照するか大学に問い合わせるようにしましょう。帰国生入試のメリット・デメリットメリット日本の教育カリキュラムに則った勉強をしていなくても受験しやすい試験のために必要な科目数が少ないケースが多く、倍率も低い滞在国の統一試験のスコアなどによっては、より上のランクの大学を目指せる特に文系の帰国生入試は面接と小論文の受験で合否を決めることが多く、試験があっても2〜3科目程度と、一般選抜より科目数が少ないのが特徴です。そのため日本のカリキュラムで勉強をしてきていない生徒であっても受験がしやすくなっています。必要な科目数が少ないため、滞在国の統一試験や小論文の対策がしっかりとできれば、一般選抜で挑戦したときよりも偏差値の高い大学に合格できる可能性が高いのも魅力です。受験者数が少ないため倍率も低い傾向にあります。ただし、倍率が低いからといって難易度も低いとは限りませんので注意しましょう。デメリット高い英語力が求められるケースが多い対策がしづらい設定されている学部が少ない帰国生枠での再チャレンジができないケースが多い帰国生入試では、英語力を示す外部試験のスコアが出願要件あるいは選考の要素となっているケースがあります。滞在国が英語圏でない場合は「滞在国の語学の勉強」「外部試験対策の勉強」「入試に向けた勉強」すべてをこなさなくてはならず、大変な勉強量になってしまう可能性があります。帰国生入試は受験者数も少ないため、特に海外にいたままだと情報や過去問が手に入りにくく、対策がしづらいのも受験においてネックになるでしょう。また、すべての大学・学部に帰国生入試が設定されているわけではありません。自分が希望する学部に帰国生入試が設定されていない場合は、総合型選抜や一般選抜を受験するしかありません。帰国生枠では「1度落ちた大学に来年再挑戦する」ことが難しい点にも注意が必要です。帰国生入試は1度しか受験を認めていない大学が多いため、もしどうしても入りたかった大学に落ちてしまった場合は一般選抜に切り替えた勉強をしなくてはなりません。帰国生入試の入試傾向帰国生入試にはどのような傾向があるでしょうか。以下では、帰国生の受け入れが多い大学や入試の特徴を解説します。帰国生に人気のある大学帰国生が多い大学や、帰国生に人気のある進路の例として、以下のような大学が挙げられます。(()内は帰国生入試を実施している学部)《私立大学》上智大学(全学部)早稲田大学(法・教育・商)慶応大学(全学部)ICU(教養)《国立大学》一橋大学(商・経済・法・社会)横浜国立大学(経済・経営・都市科学)東京外国語大学(言語文化・国際社会・国際日本)「海外生活で身につけた外国語力を活かせる学部・学科がある大学」「試験科目が少なく、勉強の負担が少ない大学」「比較的入試日程が早めの大学」が人気があることがわかります。一方で、理系学部ではあまり帰国生入試が実施されていないことがわかりますね。帰国生入試の選考の特徴と出題傾向帰国生入試には、大きく分けて3つの選考パターンがあります。① 滞在国の統一試験などのスコアを重視する出願時に提出する滞在国の統一試験や外部試験のスコアが重要視され、それをもとに1次選考(書類選考)を行います。2次選考の負担が比較的軽いのが特徴です。滞在国で良い成績を取っている人が有利になるでしょう。② 大学が課す試験の結果を重視する大学の試験結果を重視し、統一試験や外部試験のスコアは「出願資格」や「参考資料」としてあまり重視しないタイプの大学です。小論文や面接の対策が特に重要になるでしょう。③ 滞在国の統一試験などのスコアと大学が課す試験、両方のスコアを参照する①と②を組み合わせた方法で、滞在国の統一試験や外部試験のスコアで書類選考をし、大学での試験や面接と組み合わせて最終的に合否を判定する形式です。この形式の大学が最近増えてきています。滞在国の統一試験と大学の学力試験、両方の対策が重要となってきます。帰国生入試の小論文の特徴としては、「多文化共生」や「アイデンティティ」に関する問題が出題されやすい傾向にあります。ただし、大学によっては専攻科目についての基礎知識を問う場合もありますし、「テーマについて自分の意見を述べる」「文章の要約をしてから自分の意見を述べる」など出題形式も大学によって様々です。大学ごとに過去問を研究して、出題形式を見極めることが大切です。現地学校の成績は関係ある?現地学校の成績が入試に関係するかどうかは、選考パターンによります。書類審査がメインの場合は、現地学校や滞在国の統一試験の成績が当然重視されます。しかし、大学が課す試験を重視するタイプの学校であれば、それよりも面接で志望動機がはっきり答えられるか、論理的に小論文が書けているかなどのほうが重要になるでしょう。また、成績だけでなくボランティア活動やスポーツなど、高校時代に行っていた活動も書類審査の配点対象となる場合があります。勉強ばかりではなく、留学先だからこそできるような体験を積極的に積んでいると、アピールしやすくなりますね。バカロレア入試を活用する大学もある帰国生入試とは別に、バカロレア入試を設定している大学もあります。北海道大学や東京大学、早稲田大学や慶應義塾大学など上位大学の多くでバカロレアを入試に活用できます。バカロレア入試は国際バカロレアのスコアが参照されるため、理系学部であっても個別の学力試験が課されません。理系への進学を考えており、バカロレア資格があるならば、こちらも合わせて確認してみるとよいでしょう。ただし、出願学部や学科によって履修科目やスコアが決まっているケースが多く、また大学によっては帰国生入試との併願ができない場合もあります。出願する前に情報収集し、自分がどの方法で受験するのかをよく考えましょう。医学部に帰国生入試はある?前提として、医学部に限らず、帰国生が理系学部を志望するのは文系よりも大変です。多くの場合理系学部では数学と理科2科目の学力試験の受験が必要となるため、その分の勉強もしなくてはならないからです。医学部にも帰国生入試が設定されている場合もあります。ただし、一般選抜以上に帰国生の医学部入試は非常に狭き門となっています。定員数も少なく高い英語力を要求される上、日本の高校で履修する内容の数学・理科に対し高い理解力を問われ、年度によっては合格者が出ない場合もあるといわれています。帰国生入試で大学合格へ その対策方法とは帰国生入試を受けたいと思ったら、どのように動くべきでしょうか。対策方法を知り、直前になって慌てないようにしましょう。帰国生入試の入試スケジュール帰国生入試は、一般入試のように「◯月に行われる」と決まっているわけではありません。ただし、大まかな目安として、以下の傾向があります。私立大学:上位私立大学(早稲田大学・慶応大学・上智大学)の入試が9月に行われ、以降11月頃までがピーク国立大学:「11〜12月」「2〜3月」の2つのピークがある。「2〜3月」に試験が行われるタイプの学校は、一般入試と共通の問題を課されることも《目安スケジュール(5〜6月卒業の場合)》時期準備・対策高校に入学したら・受験資格などの確認をし、自分が帰国生入試を受験できるかを確認する・TOEFL®や滞在国の統一試験対策を始める入試年度の3〜7月入試要項を手に入れ、書類を準備する(卒業証明書などはできるだけ帰国前に揃えておくとよい。滞在国の夏休みに注意)6月《帰国》大手予備校の帰国生対象の講座は6月後半〜7月に開始されるため、参加を希望する場合はこのタイミングで帰国したい7月〜9月小論文・面接対策9月〜私立大学入試開始11月〜国立大学入試開始ただし上記はあくまで参考例です。日本語の読解・筆記能力によっては、もっと早くから国語力の強化や小論文対策を始めたほうがよいケースもありますし、国によっては卒業する月も異なるでしょう。大学入試に向けて、いつ何をすべきか?帰国生入試を目指すための対策は、大きく以下の2つのフェーズに分けられます。滞在国の統一試験や外部試験を対策するフェーズ(入試2年前〜)入試で課される小論文や筆記試験、面接を対策するフェーズ(入試1年から半年前〜)帰国子女の勉強は模試の成績や過去問などの情報が少なく、なおかつ志望校や目指す学部によって勉強内容も大きく変わってきます。小論文や面接対策を独力だけで行うのも非常に難しいため、塾などでプロの力を借りることをおすすめします。塾に関しても、以前は帰国してから小論文や記述問題対策を始めるのが一般的でした。しかし今はスタディカルテLabのようにオンラインで受講できる講座も多く、海外にいるうちから一貫した対策が可能です。入試まで継続して同じ講師にサポートをしてもらうことで、自分の弱点を深く理解し対策することができ、効率良く学力を向上させることができます。例えば、国語の基礎力が課題である場合は、入試直前の小論文対策に間に合うように、滞在中には現代文の基礎力の底上げをしておく、といった対策をとることもできます。また、講師との信頼関係が構築されることにより、入試までの安心感にもつながるでしょう。外部試験などの対策を含め、滞在中から帰国後にかけて途切れることなく受講しておくと、余裕を持って入試を迎えられますね。帰国生入試で気をつけたいこと帰国生入試で難しいのは、「帰国生入試を受けるのか、一般選抜で大学受験をするのか」を早い段階で決めなければならない点です。帰国生入試を受けるのであれば高校に入った頃から滞在国の統一試験や外部試験を視野に入れていく必要がありますし、逆に途中で帰国して一般選抜枠で受験するつもりならば日本のカリキュラムに合わせた勉強をして不足分を補っていかなくてはなりません。また、帰国生入試では小論文が課されるため国語力も重要になります。もし国語力が不足していると、合格しても日本語で行われる大学での授業についていくことが難しくなることも。小論文の対策も兼ね、常日頃から日本のニュースを読む癖をつけておくと良いでしょう。早めの方針決定と対策が、大学受験の鍵を握る繰り返しになりますが、帰国生入試においては、早めの方針決定と対策がとても重要です。海外に滞在しながらでも、帰国後の入試のことを見据えて、信頼できる相談先を見つけておけると安心ですね。もし「具体的に今、自分が何をすべきか知りたい」「より合格率を高めるために何をしたらいいのだろう」と思った場合は、ぜひスタディカルテLabにご相談ください。生徒ひとりひとり固有の状況を伺い、経験豊富なプロの目で、あなたの合格までの最短ルートを導き出します。お問い合わせやご相談は、公式LINEからいつでもお気軽にお声がけください。▼ 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