あっという間に夏が終わり、9月になりました。 秋からはいよいよ、本格的に受験に向けて「志望校に合格するためにはどうすればいいか」を考えながら勉強を進めていくことになります。では、具体的にどのようなことに気をつけて勉強するべきなのでしょうか?本記事では、国公立医学部受験生を主な対象として、過去問分析をおこなう際に大事なポイントをお伝えします。ぜひ本記事を参考に秋以降の道筋を立て、志望校合格につながる勉強に取り組んでください。国公立医学部は大学によって出題傾向が大きく異なる優秀な受験生が集まる医学部受験。しかしながら、もったいない勉強の仕方をしてしまっている受験生が少なくありません。ポイントを押さえた勉強ができていない原因のひとつとしてよくあるのが、過去問分析が不十分であることです。国公立医学部を受験するにあたって、過去問分析はとても重要です。なぜなら、国公立医学部の入試問題は、大学によって出題傾向が大きく異なるからです。例として、偏差値・配点バランスが似ている「神戸大学医学部医学科」と「京都府立医科大学医学部医学科」の入試傾向の概要を比較してみましょう。神戸大学(医)の個別学力試験は、標準レベルの問題を中心に出題されますが、高得点勝負です。 共通テストで失敗すると、個別学力試験での挽回が難しくなる内容です。一方で、京都府立医科大学(医)の個別学力試験は、試験時間に対して問題量が多く、難問中心の出題であり、小論文も出題されます。上記の2大学の違いを見ることで、同じ国公立医学部の入試であっても志望校によって学習内容の優先順位が変わることがイメージできるのではないでしょうか。(陸上競技で例えるならば、短距離選手と長距離選手ではトレーニング方法が変わってくることと似ているかもしれません。)このように、難関といわれる国公立医学部の入試は、大学によって「難しさ」の内容がさまざまであることに注意する必要があります。志望校がある程度固まったタイミングで、入試データや過去の入試問題を調べ、なるべく早めに出題傾向を掴んでおきましょう。スタディカルテLabでは、医学部受験に精通している専門の教務チームが全国82大学の医学部入試傾向を詳しく分析し、随時公開しています。志望校の出題傾向を把握するために、ぜひお役立てください。過去問分析は目的とポイントを押さえて取り組む過去問分析は、その目的やポイントを押さえた上で取り組みましょう。ただ漠然と過去問を解いて解答を読むだけ、わからなかった部分を教えてもらうだけでは、過去問分析の効果は大きく減ってしてしまうので注意してください。過去問分析の目的とは?前述のような大学ごとの入試傾向の違いをきちんと把握することが過去問分析の目的のひとつですが、それだけではまだ不十分です。過去問分析を通して意識すべきことは、合格に必要な点数と現状の点数との差分を明らかにすることです。そして、明らかになった差分をもとに、合格に必要なことの解像度を高め、優先順位をつけて学習に取り組むことが大切です。これが合否を分ける重要なポイントとなります。過去問分析の3つのポイント合格に必要なことの解像度を高め、優先順位をつけた学習に取り組むために、過去問分析では次の3つのポイントを押さえましょう。ポイント① 合格に必要な目標点を設定するポイント② 現状の学力を把握するポイント③ 目標点との差分から学習課題を具体的にする目指すのは ③学習課題を具体的にすること ですが、そのためには①と②が必要です。①→②→③ の順番に取り組んでください。続いては、それぞれの方法を具体的に解説していきます。自力で取り組むのは少し大変ですが、きちんと実践することで合格に大きく近づくことができます。ぜひ取り組んでみてください。ポイント① 合格に必要な目標点を設定する具体的にどのくらいの点数で合格できるのか(=ゴール地点)を確認するために、目標点を設定していきます。STEP1:合計の目標点設定まずは、合格に必要な合計目標点を設定しましょう。多くの大学は合格最低点や合格平均点を公表しているため、公式HPなどで直近3ヶ年のデータを調べてください。「おおむね、この得点をクリアすれば合格できるだろう」といえる点数を目標点として設定します。(以下、三重大学 医学部医学科 前期日程 の入試データを事例として計算)最低点平均点総得点999.83/1300 (2024)925.5/1300 (2023)950.00/1300 (2022)1028.38/1300 (2024)989.45/1300 (2023)1003.14/1300 (2022)→ 合計の目標点:1020/1300(約78.5%)と設定STEP2:共通テスト・個別学力試験 の目標点設定次に、STEP1で出した合計目標点を、共通テストと個別学力試験の目標点に分解します。大学側で共通テスト・個別学力試験それぞれの合格最低点や合格平均点が公表されている場合は、そのデータも参考にしましょう。個別の点数がわからない場合は、下記を参考にしてください。共通テスト目標点:大手予備校が公表している共通テストのボーダーを参考に、設定してみましょう。大学によって傾斜配点が異なります。(※ 2025年度入試は新科目の「情報」によって配点が変動することも考慮して微調整してください。)個別学力試験の目標点:まず、面接や小論文などの得点を仮で設定しましょう。その後、合計目標点から共通テスト目標点と面接などの仮得点を引き、残った点数が個別学力試験の目標点となります。最低点平均点共通テスト475/600 (2024)430.83/600 (2023)435.17/600 (2022)505.96/600 (2024)501.37/600 (2023)483.73/600 (2022)※ 地歴・理科以外は半分に圧縮される。2025年度から情報が50点追加。 → 共通テストの目標点:540/650(約83.1%)と設定最低点平均点個別学力試験475/700 (2024)420/700 (2023)459.50/700 (2022)522.42/700 (2024)488.09/700 (2023)519.41/700 (2022)※ 英語・数学・理科が各200点。面接は100点満点であるため80点と仮定して計算。 → 個別学力試験の目標点:480/700(約68.6%)と設定STEP3:教科別 の目標点設定STEP2で設定した共通テスト・個別学力試験の目標点を、さらに科目別に分解して、それぞれの目標点数を設定していきます。自身の得意・不得意も考慮しながら設定してみてください。合計目標点数学英語化学生物国語地歴情報面接共通テスト540/65080/10085/10090/10090/10070/10085/100(40/50)ー個別学力試験480/700120/200140/20070/10070/100ーーー(80/100)総得点1020/1350200/300225/300160/200160/20070/10085/10040/5080/100最終的に、上記のような目標点を設定できればOKです。年度によって難易度に変動があるため、毎年度必ず上記の目標点になるとはいえませんが、目標点を設定していることで状況判断時の基準とすることができます。過去問を解きながら、「目標点70%をクリアするためには、20分以内にこの大問を完答すべきだ」「目標点が50%だから、この問題は解けなくても大丈夫だ」といった判断ができるようになりましょう。ポイント② 現状の学力を把握する目標点が設定できたら、過去問を実際に解いていきましょう。自身の現状の学力(=スタート地点)を把握することが目的です。過去問は、なんとなく解くのではなく、過去問演習を通して学力把握の精度を上げるために活用してください。過去問演習時の注意点を、大きく以下の3つにまとめました。注意点1:主要科目の入試基礎力をある程度固めてから、過去問を解く入試傾向の概要を掴むことは早い方が良いですが、過去問を実際に解くのは特別な理由がない限り、入試問題がある程度解ける状態になってからにしましょう。大雑把な目安は以下の通りです。記述模試の英語・数学・理科で偏差値60以上もしくは解いた過去問の得点率が、目標得点率-30%以上(※ 模試の種類・時期、目指す大学によって調整が必要です。)上記がクリアできていない場合は、過去問演習の価値が大きく減少します。過去問を解く前に、入試基礎力を固めることに専念することをおすすめします。注意点2:解く際は、試験時間内に目標得点を超えることを意識する実際に過去問を解く際は、大問ごとに時間を測りましょう。本番を想定し、試験時間内に目標得点を超えることを意識してトレーニングを積むことが重要です。時間内に解けなかった問題については、時間をかければ解けるのかどうか、時間内に解くには何が足りていないのか、自分の状況を振り返り、よく分析しましょう。試験時間・目標得点に対する意識が弱いと、取捨選択の判断や時間配分に対する意識が甘くなり、難問を解くことに固執して解けたはずの問題を残してしまうなど、もったいない失点をしやすくなってしまうので、注意が必要です。とはいえ、最初のうちは時間内に解き切れず、問題が多く残ってしまう可能性も考えられます。このような場合は、一旦は時間内で解いてから、30分ほど時間を延長して解くことを推奨します。注意点3:解いた後は、学習状況を自己評価する過去問を解いた後は、自己評価をしましょう。解いた問題を×△○で分類し、それぞれの学習状況・対策について考えると良いでしょう。×:解答を見てもわからなかった問題 → 目標得点率を考えると、入試本番で解けなくても良い問題である可能性もあります。内容を見て、次のどちらの対策をするかの判断が必要です。対策1:「解くべき問題」だと判断した場合は、理解しやすい教材を部分的に活用したり、先生から指導を受けたりして、解法を身につけましょう。対策2:「解かなくてもよい問題」だと判断した場合は、未消化のまま残してしまって構いません。入試本番で取捨選択ができるようにしましょう。△:解答を見ればわかったが解けなかった問題→ 問題演習が不足しています。実際に手を動かして、自力で解答を再現できるようになるまで解き直しましょう。その上で、類題演習を重ねておくことが理想的です。また、理解が十分でない可能性もあるので、詰まった内容や疑問点があれば先生に共有し、指導を受けましょう。○:解けた問題→ 解けていても、時間をかけすぎている可能性があることに注意が必要です。内容を見て、次のどちらの対策をするかの判断をしましょう。対策1:「解答に時間がかかっていない」場合は、理想の状態です。特に対策は不要です。対策2:「解答に時間がかかっている」場合は、短くできる余地がないかを考えましょう。素早く解くための問題演習や、解き方自体の見直しが必要です。理解できていないまま×の問題を丸写ししていたり、目標得点率を考えずに入試本番で解けなくてもいい問題にこだわってしまったり、△や◯の問題について十分に問題演習ができていなかったりすると、学習効率は大きく下がってしまいます。よく注意して自身の状況を振り返ってください。ポイント③ 目標点との差分から、学習課題を具体的にするポイント①とポイント②で、それぞれゴール地点とスタート地点を確認しました。最後に、自己採点をした上で、目標点と比べてどのくらい差があるのかを見ていきましょう。例えば、目標点70点に対して、実際の得点が50点だったとき、足りなかった20点について「どこで得点するべきだったか」「失点しても仕方ない問題はどれだったか」を考える習慣をつけましょう。差分の内容を詳しく確認することで、「数学の図形的な考察が絡んだ複素数平面が苦手」「英語長文が時間内に読めない」「化学平衡の理論計算に時間がかかっている」「物理のコンデンサーが苦手」「生物の遺伝情報の実験考察が解けないことが多い」など、具体的な学習課題が見えてくると思います。その学習課題の克服が、合格に直結します。もちろん、予備校のテキストや市販教材のすべてを完璧にできるのであればそれが理想ですが、どの受験生も、残された学習時間は限られています。本記事では、入試本番までの限られた時間で少しでも合格可能性を高めるための方法論をご紹介しました。学習課題をきちんと見極め、志望校に合格するために、自分にとって優先順位の高い学習は何かを意識しながら取り組むことを大切にしてください。専門の学習プランナーに相談して、精度の高い過去問分析をいかがでしたか? 本記事では、国公立医学部合格に近づくための過去問分析について、ノウハウの一部をご紹介しました。過去問を上手に活用することで合格への道筋が見えてくるはずです。スタディカルテLabでは、専門の学習プランナーによる過去問分析のサポートをおこなっています。初回30分が無料ですので、「過去問分析についてプロからの客観的なフィードバックがほしい」と考えている受験生は、ぜひご相談ください。