この数年、認知度が上がってきている「ハンガリー国立医学部」。医師を目指している中高生・受験生にとって、ハンガリー国立医学部はひとつの有力な選択肢となるでしょう。ただし、海外大学の医学部に進学することのメリット・デメリットを正しく知っておく必要があります。スタディカルテLabでは2020年以降、累計20名以上の生徒をハンガリー国立医学部に輩出してきました。合格者たちが体感したリアルな入試、そして入学後の生活から見えてくることは何でしょうか。本記事では、ハンガリー国立医学部の受験を考えている方に向けて、【ハンガリー医科大学事務局(HMU)監修】のもと、ハンガリー国立医学部を受験する上で知っておきたい5つのポイントをまとめています。正しい情報把握と自分に合った進路選択の一助となれば幸いです。▶︎ 関連記事:なぜ「ハンガリー国立医学部」が選ばれるのか?医学部受験を勝ち抜く第3の選択肢ポイント1:コース選択を判断するための3つの要素日本からの留学生を受け入れているハンガリー国立医学部には、センメルワイス大学、デブレツェン大学、セゲド大学、ペーチ大学の4大学があります。いずれもWFME(世界医学教育連盟)に認定された医学部です。日本からこれらの4大学に入学する方法として、「本コース」「短期集中予備コース」「予備コース」のいずれかを受験する選択肢が設けられており、ハンガリー医科大学事務局(HMU)が窓口となって入学前から卒業まで一貫したサポートをおこなっています。本コース:2次審査に合格後の9月からそのまま大学1年生として医学部に入学する。短期集中予備コース:本コース入学前に現地で約半年間の準備を経る。予備コース:本コース入学前に現地で約1年間の準備を経る。自分に最適なコースはどれでしょうか。判断するにあたっては、次の3つの要素をチェックしてください。現時点でどのような状態であれ、現地で医学について本格的に学び始めるまでに、これら3つの要素をすべて満たしておくことが理想です。英語力:英語で生活し授業を受けることに耐えられるだけの英語力があるか異文化圏での生活力:親元を離れて海外で暮らしていけるだけの自立心、生活力があるか理科の基礎学力:理科系の科目(特に生物)について、医学を学ぶ上での基礎的な学力が備わっているか上記に挙げた3つの要素のうち、1つでも心配な点があると感じるなら、「予備コース」または「短期集中予備コース」を選択することをおすすめします。なぜなら、ハンガリー国立医学部は入学後すぐから負荷の高い学習が続くためです。新生活を予備コースからスタートすることで、慣れない異国で医学を英語で学ぶという環境に、ある程度の時間をかけて適応していくことができます。インター出身でも本コース選択が適切とは限らない日常的に英語を話しているインターナショナルスクール出身者であれば、英語力という点ではひとつハードルをクリアしているかもしれません。だからといって「本コースで大丈夫!」と言いきるのは少々危険です。インターナショナルスクールで学んでいた理科のカリキュラム内容が、ハンガリーで学ぶ内容とは大きく異なる場合、大学入学後についていけなくなるケースがあります。(特に、北米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの現地校に通っている方は注意してください。)このような点に心配が残る受験生は、無理せず「短期集中予備コース」または「予備コース」を選択すると良いでしょう。例:アメリカのボーディングスクール出身で、生活面・学習面ともに十分な英語力を有し、自立した生活もできているが、アメリカでの学習カリキュラムがハンガリーのカリキュラムと大きく違っていて、生物の知識について未知の内容が多い→ この場合、おすすめは【短期集中予備コース】進学後の学習面はもちろん、生活環境に適応できるかも含めて、自分の状況に合ったコースを検討し、入念に準備を進めましょう。ポイント2:受験→渡航→大学入学までの流れ受験するコースを決めたら、ハンガリーの大学に入学するまでの流れを確認しましょう。日本の大学は基本的に4月から新年度が始まりますが、ハンガリーの大学は9月から(短期集中予備コースは1月から)スタートします。コースによって、受験から大学入学までの流れに違いがあります。何月頃に受験するか、どのタイミングで渡航するかなど、自分の場合はどうなるのかをしっかりと把握しておきましょう。最新の情報はハンガリー医科大学事務局(HMU)のホームページを確認してください。(参考:募集要項|ハンガリー医科大学事務局 )予備コースを受験する場合▼ 試験毎年8月〜翌4月の期間中に、複数回実施されます。3ヶ月以上の期間を空ければ複数回の受験が可能です。試験内容は、英語+理科2科目+面接です。理科の問題文は、英語または日本語を選択可能です。なお、「予備コース試験」と「本コース1次審査」は共通の内容となっています。▼ 合格後センメルワイス大学(ブダペスト / マクダニエルカレッジ)の場合:合格後の9月〜翌5月下旬の約1年間、医科大学に進学すること(=進級試験合格)を目指して現地で学習します。進級試験は4月〜6月の期間中にあります。進級試験の結果によっては追試が実施されます。デブレツェン大学の場合:合格後の9月〜翌6月上旬の約1年間、医科大学に進学すること(=進級試験合格)を目指して現地で学習します。成績が優秀な学生には試験免除の制度もありますが、進級試験は通常6月頃に実施されます。進級試験の結果によっては追試が実施されます。短期集中予備コースを受験する場合▼ 試験毎年8月〜10月の期間中に、複数回実施されます。期間中に1度のみの受験となります。試験内容は、英語+理科2科目+面接です。理科の問題文は、英語または日本語を選択可能です。▼ 合格後センメルワイス大学(ブダペスト / マクダニエルカレッジ)の場合:合格後の1月〜5月下旬の約半年間、医科大学に進学すること(=進級試験合格)を目指して現地で学習します。進級試験は4月〜6月の期間中にあります。進級試験の結果によっては追試が実施されます。デブレツェン大学・ペーチ大学の場合:合格後の1月〜6月上旬の約半年間、医科大学に進学すること(=進級試験合格)を目指して現地で学習します。予備コースにてある一定以上の成績を残すと進級試験が免除されます。免除とならなかった学生は6月~7月の期間に試験を受けることになります。結果によっては追試が実施されます。本コースを受験する場合▼ 試験本コースの試験は、1次審査と2次審査の2段階あります。1次審査は8月〜翌4月の期間中に複数回実施されます。3ヶ月以上の期間を空ければ複数回の受験が可能です。1次審査の試験内容は、英語+理科2科目+面接です。理科の問題文は、英語または日本語を選択可能です。なお、「予備コース試験」と「本コース1次審査」は共通の内容となっています。2次審査は4月に実施されます。筆記テスト+英語での口頭試問です。基本的には生物と化学が受験科目となりますが、デブレツェン大学に限り生物と物理でも受験可能です。審査の結果によっては、入学の条件としてサマーコースの受講が課されることがあります。本コース受験生に対しては、試験直前の3月〜4月上旬に、ハンガリー医科大学事務局(HMU)がオンラインで本試験対策講座を実施しており、ハンガリーの講師や教授による英語での専門的な授業が受けられます。(参考:本試験対策講座|ハンガリー医科大学事務局 )ポイント3:留年・中退のリスクハンガリーの医学部は、留年や中退をしやすいといわれており、年度によって異なりますが退学者は20〜30%程度(※)というデータがあります。この20〜30%の内訳について、試験に不合格となり大学側から退学処分を受けた学生は10%以下、つまり、ほとんどが自主退学=自分で「もう無理だ」と諦めてしまうケースです。※ ハンガリー医科大学事務局(HMU)調べ留年率・中退率の実態とその背景留年・中退の実態を詳しく見ていきましょう。留年・中退リスク留年・中退の主な原因1年生やや高い・基礎学力が不足している状態で本格的な学習が始まり、授業内容についていけなかった・語学面や生活面などの環境変化に適応できなかった2年生やや高い・2年生から始まる「生理学」のように、範囲が膨大な科目の学習についていけなくなった3年生低い・「病理学」や「薬理学」などが始まり、扱う科目や範囲がさらに広くなる4年生以降非常に低い・臨床中心になる留年や中退の多くは1年生〜2年生の間に発生しており、日本人学生の留年率が最も高いのは1年生です。学習内容だけを見ると3年生が最も大変だと思われますが、この頃まで残っている学生は多くの場合、自身の勉強方法を確立できているため、乗り越えられる人が多いようです。4年生以降は、進級率が90%台(ほぼ100%)と非常に高くなります。よほどの事情がない限り、そのまま進級していきます。どんな学生が留年・中退するのか留年や中退をしてしまう学生は、以下の4つの傾向があるといえます。① 学習習慣の不足実際に留年しているケースのほとんどは、圧倒的に勉強量が足りていません。試験直前のみの勉強や1日2時間程度で満足している学生がいる一方で、真剣に取り組んでいる学生は毎日授業以外に5〜6時間以上の時間を捻出しているという話もあります。② 入学動機の不足ハンガリーの医学部に進学した理由が明確でない学生の場合、モチベーション維持が難しく、環境にさまざまな理由をつけて中退に至ってしまうケースがあります。消去法的な理由あるいはネガティブな理由(日本の医学部には合格できないから、など)で入学した場合であっても、「ここで諦めれば、医師になれない!」と高いモチベーションを維持している学生の多くは、卒業して夢を叶えています。③ 生物の基礎知識の不足日本の高校で物理を選択し、生物を履修していなかった学生は、入学後に苦労する傾向があります。医学部に入ってからは生物について学ぶ比率が非常に大きくなるため、高校で生物を学んでいなかった学生の成績不振が一定数見られます。④ 異国での生活のストレス日本とは異なる環境での暮らしである上、基本的には親元を離れることになるため、日々の生活に心理的ストレスを抱えたり、ホームシックになったりする学生もいます。英語力やコミュニケーション力が低いことでグループに馴染めない、困ったときに上手く頼れないなどが重なると、苦労することになるでしょう。予備コースや本コース1次試験に合格した後も、油断は禁物です。モチベーションと学習習慣を保ち、本格的に大学の授業が始まるまでに英語力や理科の学力を可能な限り伸ばしておく必要があります。ポイント4:英語の試験対策「予備コース試験」および「本コース1次審査」での英語筆記試験は、TOEFL ITPに準拠した出題がされます。(TOEFL ITPとTOEFL iBTは出題形式が異なるので注意してください。)面接試験では、日本語だけでなく英語でのやりとりができるかも確認されるので、日常的にリスニングやスピーキングの学習を進めておきましょう。英語筆記試験の免除資格について「予備コース試験」および「本コース1次審査」では、指定の英語外部資格を所持している場合、英語の筆記試験が免除されます。以下が試験免除の基準です。TOEFL iBT 68点以上IELTS 5.5点以上英語検定 CSEスコア 2392点以上(準1級相当)TOEFL ITP スコア 525点以上(HMU実施テストに限る)中でもハンガリー医科大学事務局(HMU)が2025年から実施しているTOEFL ITP テストは、受験費用が税込5,000円と安く、対策しやすいため、狙い目だといえるでしょう。(参考:TOEFL ITP テスト|ハンガリー医科大学事務局、チェコ医科大学事務局 )ポイント5:理科の試験対策「予備コース試験」「本コース1次審査」での理科の試験は、試験時間が2科目45分で、日本の医学部受験とは異なり出題範囲に偏りがある点が特徴的です。化学は化学基礎の範囲をベースに、特に理論分野を中心に出題される傾向にあります。生物は医学や人体に関係する内容が出題の多くを占めています。早期から生物の学習を日本の医学部を志望している受験生の場合、理科については物理・化学の選択者が多くいますが、ハンガリー国立医学部を受験するのであれば、早期から生物の学習に取り組んでおくことを推奨します。医学を学ぶ上で、生物は重要度の高い科目です。ポイント3でも述べたように、高校生物を未履修の状態でハンガリーの医学部に入学すると、未知の内容を英語で学ぶことになり、入学後の負担が非常に大きくなります。ハンガリー国立医学部の受験においては、生物選択者が全体の約95%(※)を占めているというデータがあります。もともと物理選択だった受験生も、ハンガリーの医学部を受験すると決めたタイミングで生物選択に切り替えて勉強し、合格しているケースも多く見られます。※ ハンガリー医科大学事務局(HMU)調べ2次審査の口頭試問を想定し、早期から対策をさらに「本コースの2次審査」または予備コースからの「進級試験」では、筆記試験だけではなく、英語での口頭試問が課されます。トピックとしては例えば、免疫、血液凝固、血糖値調整、ホルモン、DNAの転写と翻訳などが想定されます。出題の可能性がある内容を体系的に理解した上で、英語で説明することに慣れておかなければなりません。単純に知識を暗記しているだけでは対応できないため、注意が必要です。渡航後の学習や生活を見据えた丁寧な準備を本記事では、ハンガリー国立医学部を受験するにあたり知っておくべき5つのポイントについて紹介しました。ハンガリーの医学部は、入学してからが本番です。目の前の試験に合格することだけでなく、渡航後・入学後の学習面や生活面も含めて具体的にイメージしながら、自身にとって最適な選択肢を選ぶよう心がけましょう。ハンガリーの医学部に完全特化した対策で、最短距離で合格!スタディカルテLabでは、ハンガリー国立医学部の出題傾向から逆算した、合格に直結する過去問演習とオンライン個別指導が受けられます。◆ 特徴 1 ◆過去の出題内容を徹底分析したオリジナルテキストハンガリー国立医学部の入試傾向は特殊で、出題範囲に偏りがあります。スタディカルテLabでは、過去の出題内容を分析して作成したオリジナルテキストをご用意。傾向にピンポイントの内容を効率的に学ぶことができます。◆ 特徴 2 ◆トップクラスのプロ講師によるオンライン個別指導各科目の指導を担当するのは、ハンガリーの医学部受験に精通しているプロ講師陣。リアルタイムのやりとりで、わかりやすく高密度な指導が受けられます。◆ 特徴 3 ◆志望理由書作成や面接練習も全面的にサポート自分ひとりでは難しい志望理由書の作成と面接対策。ありのままの自分を伝えつつも好印象となるように、専属の学習プランナーが全面的にサポートします。当塾では現在、学習プランナーによる30分の無料学習相談を受付中。学習相談を受けられた方には、「本コース1次審査」「予備コース」の出題傾向まとめを無料プレゼントいたします。「日本の医学部受験と並行して対策を進めたい」「ハンガリーの医学部受験に向けてどんな対策をするべきか、もっと詳しい話を聞きたい」など、まずはお気軽にご相談ください。