本記事では、中国地方の国公立医学部である広島大学(医)・岡山大学(医)・山口大学(医)・島根大学(医)・鳥取大学(医)の、配点・科目・偏差値だけでは判断が難しい “出題傾向” を解説します。スタディカルテLabの教務チームが、過去問分析から見えてくる傾向と対策を比較しながら、志望校の入試傾向を掴むことの重要性と、合格に必要な学習計画・勉強法を組み立てるためのコツをお伝えします。国公立医学部への合格を目指して情報収集をしていると、「難問が解けないといけない」「基本問題だけできれば大丈夫」「速く正確に解けないと間に合わない」……などなど、様々な情報が出てきて、いったい何が正しいのだろうと混乱してしまっている人もいるかもしれません。なぜこんなにも多種多様な情報が出てくるのでしょうか。それは、そもそも入試の特徴が大学によって様々であることに起因します。特にハイレベルな競争となる医学部受験では、求められる学力が大学ごとに大きく異なるため、どの情報が正しいかは目指す志望校の入試傾向によって違ってくるのです。配点・科目・偏差値は、あくまでも一次情報。国公立医学部への合格を目指すなら、国公立医学部について漠然と考えるのではなく、「あなたの志望校に」合格するには何が必要か、を考えていきましょう。中国地方の国公立医学部実際のところ、入試傾向は大学ごとにどのように異なっているのでしょうか?今回は中国地方の5大学、広島大学(医)・岡山大学(医)・山口大学(医)・島根大学(医)・鳥取大学(医)を事例に、大学入試の出題傾向の違いを解説していきます。広島大学 医学部医学科 傾向と対策● 共通テスト最低点: 650/900 (2022年度 大学HP) B配点 72.2%● 個別学力試験最低点: 1236/1800 (2022年度 大学HP) B配点 68.7%● 総合最低点: 1965/2700 (2022年度 大学HP) B配点 72.8%● 教科配点: 画像参照 (2022年度 大学HP)● 再受験寛容度: 寛容 (2022年度 大学基本情報の入学者年齢別分布から判断)● 面接: 総合評価● 小論文負担: なし広島大学医学部医学科は、共通テストよりも個別学力試験が重視される配点です。2023年度からは個別学力試験の配点が特殊な形式になり、理科重視の配点と、英数重視の配点が新設されました。英語・数学で高得点を目指すのか、理科2科目で高得点を目指すのか、方向性を固めておくといいでしょう。どの配点での合格を目指すかで、学習計画も受験戦略も大きく変わってきます。個別学力試験については、数学は記述量や計算量が求められる問題が多く見られます。英語では「要約問題」や「グラフ読み取りの英作文問題」など出題形式に傾向が見られるので、事前に特化した対策をおこなっておきたいところです。理科に関しては、物理では力学や電磁気、化学では有機・高分子、生物では遺伝情報や生態系などの頻出分野があるので、特にしっかりと対策をおこなっておきましょう。▶︎ 広島大学医学部の入試傾向と対策について詳細はこちら岡山大学 医学部医学科 傾向と対策● 共通テスト最低点: 359.2/500 (2022年度 大学HP) 71.8%● 個別学力試験最低点: 735.0/1100 (2022年度 大学HP) 66.8%● 総合最低点: 1133.6/1600 (2022年度 大学HP) 70.9%● 教科配点: 画像参照 (2022年度 大学HP)● 再受験寛容度: 普通 (2022年度 大学基本情報の入学者年齢別分布から判断)● 面接: 配点不明● 小論文負担: なし岡山大学医学部医学科は、共通テストよりも個別学力試験がかなり重視される配点です。教科別の配点の偏りが大きく、英語・数学・理科の3教科だけで、共通テストと個別学力試験の合計配点の87.5%を占めています。また、2024年度入試からは、CEFRレベルC1(英検1級程度)以上は共通テスト及び個別学力検査の英語成績をいずれも満点とみなすという変更点が加えられる予定です。これによって、最優先で英検1級を取得し、あとは理数に集中して受験するという学習計画を立てることも可能です。個別学力試験については、全教科が他学部と共通の問題であり、ほとんどが標準的な難易度の問題です。理科については、物理で原子が出題されにくいなどの傾向はあるものの、基本的にはどの教科も全範囲からまんべんなく出題される傾向にあるので、苦手範囲は早めに無くしておきましょう。▶︎ 岡山大学医学部の入試傾向と対策について詳細はこちら山口大学 医学部医学科 傾向と対策● 共通テスト最低点: 591.6/900 (2022年度 大学HP) 65.7%● 個別学力試験最低点: 377.0/600 (2022年度 大学HP) 62.8%● 総合最低点: 1026.8/1500 (2022年度 大学HP) 68.5%● 教科配点: 画像参照 (2022年度 大学HP)● 再受験寛容度: 厳しい (2022年度 大学基本情報の入学者年齢別分布から判断)● 面接: 配点不明(総合評価)● 小論文負担: なし山口大学医学部医学科は、共通テスト重視の配点です。共通テストで失敗すると個別学力試験で逆転しにくくなるので、共通テスト対策がより重要になってきます。どの教科も入念に取り組みましょう。個別学力試験は全体的に解きやすい問題が多いです。数学は微積分の頻出テーマが頻出で、証明や誘導に乗るための練習が必要です。英語に関してはさまざまな形式の問題が出題されるため、過去問を使った事前の入念な準備が必要です。理科は、他学部は1科目90分、医学部は2科目で150分の試験時間が設けられており、他学部と比較すると短い時間で解答しなければいけません。内容は基礎〜標準的な難易度のものが多く、速く正確に処理する力が必要です。▶︎ 山口大学医学部の入試傾向と対策について詳細はこちら島根大学 医学部医学科 傾向と対策● 共通テスト最低点: 465.40/700 (2022年度 大学HP) 66.5%● 個別学力試験最低点: 259.00/460 (2022年度 大学HP) 56.3%● 総合最低点: 803.40/1160 (2022年度 大学HP) 69.3%● 教科配点: 画像参照 (2022年度 大学HP)● 再受験寛容度: 寛容 (2022年度 大学基本情報の入学者年齢別分布から判断)● 面接: 配点60点● 小論文: なし島根大学医学部医学科は、共通テスト重視の配点です。ただし、共通テストの数学と英語の配点が半分に圧縮されるため、他の国公立医学部と比較すると相対的に、理科・国語・社会の共通テストにおける重要度が大きくなることが特徴です。なので、文系出身の医学部再受験生が受験しやすい大学です。また、個別学力試験は英語と数学のみが課され、理科がありません。数学は標準的なレベルの問題が多いものの、一部難易度の高い問題も出題されます。英語は長文1題と和文英訳1題が医学部固有問題となっており、医療系テーマなどの専門的な内容の長文も出題されます。▶︎ 島根大学医学部の入試傾向と対策について詳細はこちら鳥取大学 医学部医学科 傾向と対策● 共通テスト最低点: 非公表● 個別学力試験最低点: 非公表● 総合最低点: 1183.6/1600 (2022年度 大学HP) 74.0% ● 教科配点: 画像参照 (2022年度 大学HP) ● 再受験寛容度: (2022年度 大学基本情報の入学者年齢別分布から判断) ● 面接: 配点100点 ● 小論文負担: なし鳥取大学医学部医学科は、共通テスト重視の配点です。2021年度入試から、共通テストでの第一段階選抜が実施されるようになりました。共通テスト900点満点中600点が足切りラインになるので注意しましょう。個別学力試験は全科目とも標準的な難易度の問題が多い傾向にあります。数学は直近3ヵ年で4題中2題〜3題程度が数3から出題されており、数3からの出題比率は高めです。英語は、自由英作文の攻略で大きく差がつきます。理科に関しては、他学部と共通の問題で試験時間も他学部と同じであるため、医学部受験生は高得点を取りたいところです。▶︎ 鳥取大学医学部の入試傾向と対策について詳細はこちら中国地方5大学の傾向比較広島大学、岡山大学、山口大学、島根大学、鳥取大学の医学部医学科について、入試データと概要分析をご紹介しました。各大学の共通点として、基本的には英語・数学・理科の配点比率が高いことがわかります。医学部医学科を受験するにあたっては、まずはこれら主要科目をどれだけ得意科目にできるかが重要です。特に岡山大学では英・数・理で合計配点の87.5%を占めており、また、広島大学では理科重視配点と英数重視配点が新設されたため、どれだけ医学部受験生にとってこれらの3教科が大切かがわかるでしょう。次に、各大学を比較して違いを見ていきましょう。共通テストの配点比率に注目すると、島根大学と山口大学は共通テストの配点が高く、共通テストで失敗した場合の影響が大きいことがわかります。中でも島根大学は数学・英語の共通テスト配点が半分になることが特徴です。合格最低点に注目すると、広島大や岡山大は、共通テストでも個別学力試験でも高得点が求められますが、戦略的に個別学力試験での逆転がしやすい大学です。一方で山口大や島根大は、共通テストで高得点が取れていれば、逃げ切れる可能性は相対的に高いといえるでしょう。また、教科別の比較からも違いが見えてきます。個別学力試験の理科に注目すると、鳥取大学の生物では典型的な問題を時間内でいかに効率よく解答するかが求められ、岡山大学の生物では年度によっては60分で500〜600字ほどの論述が課されることもあり論述対策が必須、などの特徴があります。個別学力試験の英語については、島根大学では医学部固有テーマの長文が出題される、広島大学では要約問題やグラフ英作文問題が出題される、山口大学では手紙やメール形式の問題が出題されるなどの特徴があります。以上のように、中国地方5大学の入試データを比較すると、配点や傾向が異なっていることがわかります。志望校の入試傾向を掴んだ上で、優先順位をつけて学習に取り組むことが合格への第一歩です。国公立医学部を志望している方は、まずは自分の志望校について入試傾向を分析することをおすすめします。志望校分析と現時点での学力との差分から、優先順位を考える学習計画を立てるには、前述のように志望校の出題傾向を把握することはもちろんのこと、現時点での自分の学力も把握する必要があります。目標と現在地点との差分を確認することで、目標点に到達するにはどのような勉強が必要なのかを考えることができます。迷路に例えるならば、ゴール地点(=志望校の入試傾向)とスタート地点(=現時点の学力)との両側から道筋を立てていくようなイメージです。例えば、広島大学の医学部医学科を志望している人の場合、入試傾向と自分の現時点での学力を比べて、以下のように方針を考えることができるでしょう。「広島大学(医)は英語で英作文問題が多く出題される。要約問題も含めて、塾や学校の先生に添削してもらおう」「化学の構造決定の問題が頻出だから、秋までに完璧にしておこう」「場合の数・確率や、微積分がよく出題されるので、過去問を使って類似問題のアプローチ方法を押さえておこう」志望校分析と自分の現状分析の精度を上げていくことで、学習内容の優先順位をつけられるようになります。精度の高い分析をおこない、自分に本当に必要な学習を見極め、そこに集中すること。医学部合格の鍵は、ここにあります。あなたの医学部受験に “参謀”を。今回の記事では、中国地方の5大学を事例に、志望校の入試傾向分析と、自分の現状分析から、学習の優先順位をつけることの重要性についてお伝えしました。今回お伝えした志望校分析や考え方は、ほんの一部分です。適切な学習計画を立てて受験勉強を進めていくためには、志望校分析だけでなく、個別に状態をよく確認した上で戦略を組み立てていく必要があります。スタディカルテLabでは現在、30分のオンライン学習相談を無料で受付中です。「今使っている教材は志望校の出題傾向と相性がいいかどうか?」「共通テスト・個別学力試験で、各教科何点を目指せばいい?」「どのように優先順位をつければいい?」「どんな時間配分で勉強すべき?」「どのように過去問演習を進めればいい?」などなど、気になっていることをご相談ください。専門の学習プランナーが、あなたの現状を深くヒアリングした上で、志望校選定・学習計画・優先順位などについてアドバイスします。学習相談希望者は、スタディカルテLabのLINE公式アカウントを友だち登録し、メッセージでご相談内容をお送りください。順次お返事いたします。