TOEFLやTOEIC、英検などに代表される「英語外部試験」(英語外部検定試験 / 外検)。国公立医学部の受験において、英検などの外部試験で一定のスコア以上を取得していると受験が有利になる大学があることをご存知ですか?英語外部試験の入試利用は大学によって条件がさまざまであるため、「英検何級から大学入試で利用できるのか」「TOEFLやIELTSなど他の英語外部試験は利用できるのか」「英語外部試験を受けていれば、共通テストや個別試験は受けなくてもいいのか」……などなど、いったい何が正しいのだろうと混乱してしまっている人もいるかもしれません。そこで本記事では、主な英語外部試験の紹介とともに、英語外部試験が利用できる代表的な国公立医学部の一般入試について解説します。英検などの資格を持っている医学部受験生や、これからスコアの取得を目指そうと思っている高校生の参考になれば幸いです。主な英語外部試験の種類英語の外部試験にはどのような種類があるのでしょうか?実用英語技能検定(英検)やIELTS、TOEFLなど、様々な試験の特徴を以下にご紹介します。実用英語技能検定(英検)英検は、日本で幅広く受験されている英語外部試験のひとつです。英語力に合わせて5級から1級までを選択して受験する試験形式です。年に3回実施される「従来型」と、毎週土日に実施される「S-CBT」の2種類があります。S-CBTは1日で4技能が測定でき、忙しい受験生におすすめです。また、検定期間内に同じ級をS-CBTで2回+従来型で1回(合計最大3回)、年間で最大9回まで受験可能となっているため、受験のチャンスを増やして取り組むことも可能です。ただし、1級に限ってはS-CBTでの受験ができません。英検は、受験受験料が10,000円前後と、比較的気軽に受験することができます。受験結果は、受験級の合否と英検CSEスコアで示されます。(参考:英検(実用英語技能検定)|公益財団法人 日本英語検定協会 )GTEC(ジーテック)GTECは、ベネッセコーポレーションが実施するスコア型の民間英語試験です。対象となる受験者層ごとに、「Core」「Basic」「Advanced」「CBT」の4つの難易度に分けられており、「Core」は中学校2年生〜中学校3年生レベル、「Basic」は中学校3年生〜高校2年生レベル、「Advanced」は高校1年生〜高校3年生レベル、「CBT」は高校2年生の後半〜高校3年生レベルの問題が出題されます。学校などを通した団体受験が一般的ですが、「CBT」に関しては個人での受験となります。大学入試においてはGTEC CBTのスコアで評価されることが一般的です。成績は4技能各350点満点の合計1400点満点で示されます。(参考:GTEC | スコア型英語4技能検定|ベネッセコーポレーション )IELTS(アイエルツ)IELTSは、ブリティッシュ・カウンシルが運営するスコア型の民間英語試験です。日本国内においては、日本英語検定協会がブリテッシュ・カウンシルと共同で運営しています。世界140ヵ国で幅広く受験されており、国際的に高い通用性を持ち、大学入試のみならず留学や移住といった目的にも利用可能な試験です。IELTSはペーパー版とコンピュータ版の2種類に分かれており、コンピュータ版の試験はほぼ毎日実施されています。受験料は25,000円程度です。成績は4技能それぞれについてと総合評価(OverAll)が、1〜9の段階評価で示されます。(参考:IELTS 公式サイト|英検協会 )TOEFL iBT(トーフル アイビーティー)TOEFL iBTはアメリカのETS社が運営するスコア型の民間英語試験です。世界各国で幅広く受験され、IELTSと同じく大学受験や留学の資格など、様々な目的で利用できます。基本的にコンピュータで実施され、ペーパー型はありません。留学を想定した問題を中心に構成されており、自然科学や社会科学といったアカデミックな内容が出題される傾向にあります。試験は土日のみ、年間50日程度の実施です。成績は、各30点×4技能の合計120点満点で示されます。(参考:TOEFL iBTテスト )また、TOEFL ITPと呼ばれるテストも存在します。TOEFL iBTは基本的に個人受験であるのに対し、TOEFL ITPは団体での受験プログラムとなっています。TOEFL ITPはリスニング・文法・リーディングの3項目でのテストであり(スピーキングはデジタル版のみ追加オプションが選択可能)、そのスコアは入試利用ができない場合が多いので注意しましょう。TOEIC(トーイック)TOEICはTOEFLと同じく、アメリカのETS社が運営するスコア型の民間英語試験です。日本では国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)がその運営を担っています。日本では主に就職活動の際に多く用いられていますが、大学入試で利用を認める大学も増えてきています。基本的にペーパー型試験で、月1回程度の頻度で実施されます。リスニングとリーディングのみの形式が一般的ですが、スピーキングとライティングの能力を問う形式も存在します。TOEIC Listening & Readingの成績はリスニング495点+リーディング495点の合計990点、TOEIC Speaking & Writingの成績はスピーキング200点+ライティング200点の合計400点でスコアが示されます。4技能合計の1390点満点で評価されることもあります。(参考:TOEIC|一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会 )TEAP(ティープ)TEAPは、上智大学と日本英語検定協会が共同で開発した民間の英語検定試験です。英検とは異なり、スコア型で成績が出され、内容も、よりアカデミックなものとなっています。ペーパー型「TEAP」とコンピュータ型「TEAP CBT」の2種類があり、どちらも年に3回実施されます。ペーパー型TEAPの成績は4技能各100点満点の合計400点満点、TEAP CBTの成績は4技能各200点満点の合計800点満点で示されます。(参考:TEAP(ティープ) | 公益財団法人 日本英語検定協会 )ケンブリッジ英語検定ケンブリッジ大学英語検定機構が運営する民間試験です。日本ではやや知名度が低いものの、欧米諸国では有力な英語試験として活用されています。外国語の熟達度を表すCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という等級に準拠し、英語力に合わせて6つの試験が用意されています。年間で20回ほど実施されています。成績はA〜Cのグレードで出されます。(参考:ケンブリッジ英語検定 )英語の熟達度を示す CEFR(セファール)とは?CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)とは、直訳すると「欧州言語共通参照枠」であり、元々はヨーロッパで使用されている言語の語学力を適切に評価するための基準となるよう作られたものです。現在、世界各国の多くの機関が活用しており、日本においても有名になりつつある指標です。前述した様々な英語外部試験の点数やスコアは、CEFRに基づいて、目安となるレベルを示すことができます。CEFRにおいて、英語の熟達度レベルは、A1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階に分けられます。以下に、欧州評議会によって提示されているCEFRの基準をご紹介します。段階CEFR能力レベル別に「何ができるか」を示した熟達度一覧熟達した言語使用者C2聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。C1いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。自立した言語使用者B2自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。B1仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。基礎段階の言語使用者A2ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。A1具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。(出典:ブリティッシュ・カウンシル)各団体が実施する試験とCEFRとの関係英検やIELTSなどの各団体が実施している試験とCEFRスコアとの関係の目安は以下のとおりです。CEFRスコア英検GTEC CBTIELTSTOEFL iBTTOEIC (4技能合計)TEAPケンブリッジ英検C28.5-9.0Proficiency (CPE)C11級14007.0-8.095-1201305-1390400Advanced(CAE)B2準1級1250-13995.5-6.572-941095-1300334-399First(FCE)B12級1000-12494.0-5.042-71790-1090226-333Preliminary (PET)A2準2級700-9993.0385-785186-225Key(KET)A13〜5級-6992.0200-380(出典:文部科学省)上記で紹介したCEFRの対照表はあくまで得点の目安です。評価基準は各大学によって異なるので、最新の募集要項で「どの外部試験を活用できるのか」「何点以上、何級以上だと活用できるのか」「資格の有効期間はいつまでなのか」などを事前に確認しておきましょう。外部英語試験が入試で使える国公立医学部国公立医学部の受験において、外部英語試験はどのように活用できるのでしょうか?国公立医学部の一般選抜で活用する場合の一例をご紹介します。広島大学 医学部医学科広島大学医学部の入試では、CEFR相当レベルB2以上を所持している場合、共通テストの外国語(英語)の得点が満点とみなされます。ただし、外部検定試験のスコアを利用する場合であっても、共通テストは受験する必要があるので注意しましょう。▼スコア基準名称スコア・等級(適用区分B2以上)Cambridge EnglishFCE(160~179)以上英検(実用英語技能検定)準1級以上GTEC CBT1250以上IELTS TM(Academic Module)5.5以上TEAP334以上TOEFL iBT®72以上TOEFL Junior® Comprehensive341以上TOEIC L&R + S&W1095以上(L&R 785以上及びS&W310以上)(参考:英語外部検定試験の一般入試等での活用について|広島大学 )広島大学医学部の入試傾向や他科目の対策方法については、以下の記事もご参考ください。▶︎ 広島大学 医学部 の入試傾向と対策を徹底解説佐賀大学 医学部医学科佐賀大学医学部の入試では、英語外部検定試験(4技能試験)の保持スコアが共通テスト(英語)の得点に換算され、合否判定に利用されます。ただし、検定試験の換算点が共通テスト(英語)の得点より高い場合に限っての利用となります。▼スコア基準共通テスト得点英検 ※英検CSEスコアTEAPGTEC CBTTOEFL iBT90%2250以上270以上1100以上61以上80%2150〜2249235〜2691000〜109952〜6070%2050〜2149220〜234900〜99945〜51対象外2049以下219以下899以下44以下なお、2024年度入試からは以下の条件が追加されるため、注意しましょう。大学入学共通テストの英語の「リーディング」(100点満点)と「リスニング」(100点満点)の合計点が100点を下回る場合には(得点率50%未満),換算表の基準を満たしていても検定試験の換算は行いません。(引用元:英語外部検定試験の一般選抜での利用について(予告)|佐賀大学 )(参考:一般選抜|佐賀大学 )佐賀大学医学部の入試傾向や他科目の対策方法については、以下の記事もご参考ください。▶︎ 佐賀大学 医学部 の入試傾向と対策を徹底解説鹿児島大学 医学部医学科鹿児島大学の入試では、外部英語検定試験の結果によって、共通テスト(英語)の成績をみなし満点または加点する制度があります。▼スコア基準名称スコア・等級(適用区分B2以上)Cambridge EnglishFCE以上英検(実用英語技能検定)準1級以上GTEC CBT1250以上IELTS5.5以上TEAP334以上TOEFL iBT72以上TOEIC L&R + TOEIC S&W1095以上(L&R 785以上かつS&W310以上)上記のスコア基準を満たしている場合、以下の基準に従って共通テスト(英語)の得点が扱われます。共通テスト(英語リーディング)の得点率共通テスト(英語リーディング)のみなし得点80%以上満点80%未満得点の25%を加点する(参考:外部英語検定試験スコアによるみなし満点(又は加点)制度の利用について|鹿児島大学 )鹿児島大学医学部の入試傾向や他科目の対策方法については、以下の記事もご参考ください。▶︎ 鹿児島大学 医学部 の入試傾向と対策を徹底解説岡山大学 医学部医学科岡山大学医学部の入試では、CEFR相当レベルがC2またはC1である場合は、共通テストの英語および個別学力検査等の英語の成績が、いずれも満点とみなされます。(2025年度入試)2026年度入試からは、CEFR相当レベルがC2またはC1である場合は、共通テストの得点のみが満点とみなされる予定です。(参考:2026年度入学者選抜方法の変更について(2025年度実施)|岡山大学)CEFRスコア英検 ※英検CSEスコアGTEC CBTIELTSTOEFL iBTTOEIC (4技能合計)TEAP (4技能)TEAP CBT (4技能)ケンブリッジ英検 ※スコアC28.5-9.0200-230C12600-32991350-14007.0-8.095-1201845-1990375-400800180-199※ TOEICに関しては、TOEIC Speaking & Writing Testのスコア(400点満点)を2.5倍にしてTOEIC Listening & Reading Testのスコア(990点満点)と合算します。(=1990点満点)(参考:岡山大学 2024年度 入学者選抜要項|本学が指定する英語資格・検定試験(4技能)一覧)岡山大学医学部の入試傾向や他科目の対策方法については、以下の記事もご参考ください。▶︎ 岡山大学 医学部 の入試傾向と対策を徹底解説医学部受験は入試戦略で決まる本記事では、大学入試で使える外部英語試験の概要と、広島大学・岡山大学・佐賀大学・鹿児島大学の医学部医学科の一般選抜における英語外部試験利用についてご紹介しました。医学部受験は、英語と数学と理科で勝負が決まる大学が多いため、英語が得意な受験生は医学部入試で大きくリードを得ることができるでしょう。英語外部試験でのスコアをすでに取得している受験生は、本記事を志望校選びの参考にしてもらえたらと思います。スタディカルテLabでは、丁寧なヒアリングをもとに、ひとりひとりの学習状況に合わせて、学習計画の立て方や勉強の進め方などをアドバイスしています。「A大学とB大学どちらを受験するか迷っている」というような志望校選びや進路のご相談も承ります。勉強や受験に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度スタディカルテLabにご相談ください。毎週最大5名様まで、30分の無料学習相談を受付中です。▼ 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