大学入試を視野に入れたときに、必ず考えなければいけないのが「どんな学部・学科を受験するのか」ということ。しかし、「自分が本当にやりたいことってなんだろう?」「そもそも大学で何ができるのかわからないのに」と迷う人は多いのではないでしょうか。今回の記事では、そんな進路に迷う高校生の方に向けて「入学後に専攻を決められる大学」をご紹介します。いくつかあるパターンと、メリットやデメリット、代表的な大学を知っておきましょう。「入学後に進路や専門を決める」とは?大学受験をするときには、学部・学科まで、つまり「何を専門として勉強したいか」まで決めて受験するのが一般的です。しかし「Late Specialization(レイト・スペシャリゼーション/遅い専門化)」といって、中には入学後に進路や専門を決められる大学もあります。「Late Specialization」とは、具体的には「大学の1年〜2年生の間は教養科目を幅広く勉強し、2年〜3年生に進級する際、自分の興味のある専門分野を選択できるシステム」で、一般的な大学受験のように学部学科を指定して受験せず、学校全体あるいは学部単位で人員が募集されるのが特徴です。「Late Specialization」には、大きく分けて2つのパターンがあります。 学部の垣根なく、後から自分の専門とする学部学科や系列を決められる(東京大学やICUなど) 学部は決まっていて、後から自分の専攻する学科や系列を決められる(京都大学総合人間学部や早稲田大学文学部など)2の場合は、後から専攻を決められると言ってもあくまで学部内での話であり、学部を超えた選択はできません。例えば早稲田大学文学部に進学した場合、後から決められるのはあくまでも文学部内のコース(哲学や英文学、日本史など)のみです。同じ文系であっても法律系や商業系に行くことはできません。ただし、京都大学総合人間学部のように、学部内であっても文理の幅を超えた広い選択ができるケースも存在します。入学後に進路選択するメリット入学後に進路を決めるメリットには以下のものがあります。実際に大学でできることを知ってから専攻を決められるため、ミスマッチが起きにくい幅広い学問に触れながら自分の興味にあったものを選べる大学の専門的な勉強は、高校の段階ではまだイメージしかできていない人も多いでしょう。そのため、大学入学後に「私がしたい勉強ではなかった」とミスマッチに悩む人もいます。進路を入学後に決める場合、実際の学問内容に触れてからの選択となるため、自分の興味関心と専攻の不一致は起きにくくなります。また、大学に入って自分の考えや興味内容が変わった、大学で初めて触れる内容に心動かされたなどの場合も柔軟に対応できます。受験時に専攻を決めなくて良いため、じっくりと自分の進路を考える時間も取れるでしょう。入学後に進路選択するデメリット入学後に進路を決めるデメリットには以下のものがあります。必ず希望の進路に進めるとは限らないカリキュラムや授業選択によっては専門の勉強を深められないことがある「Late Specialization」の場合、2〜3年生に進級する際に進路選択を行います。この際コースや学部ごとに定員があるため、必ずしも自分の希望する進路に進めるとは限りません。履修状況や試験結果によっては、専攻を希望していない系列に振り分けられてしまう可能性もあります。また、専門的な勉強を始めるのも進路選択をしてからになるので、自分の履修選択や学校のカリキュラムによっては思ったように学びを深められないケースもあるでしょう。進路を決める前は幅広く教養科目を勉強しなくてはならないため、自分の専門を決めている人からしてみれば「興味・関心の薄い科目までたくさん履修しなくてはならない」と、わずらわしさを感じることもあるかもしれません。学部変更との違い学部変更と「Late Specialization」の違いとして一番大きな点は、「標準的なカリキュラムとして設定されているかどうか」です。学部変更の場合、その進路は想定されておらず1〜2年時の勉強と転部・転科先での学びが一貫するとは限りません。学校内で試験や面接があることも多く、受け入れ先の学部の人数や現在の履修状況、自分の成績などによって、受理されない場合や留年が必要なケースもあります。「勉強内容が自分の思っていたものと違った」「興味が別の学問に移った」とカジュアルに転部することは難しいでしょう。しかし、「Late Specialization」の場合はカリキュラムとして設定されているため、全員が2〜3年の進級時に自分の専攻選択ができます。1〜2年時の教養科目で学べる内容と専攻も対応しているため、自分の興味に合わせて教養科目で気になった学問内容を深められるでしょう。代表的な「Late Specialization」の大学後から自分の専攻を決められる「Late Specialization」を取り入れている大学のうち、人気の高いものを紹介します。① 学部の垣根なく、後から自分の専門とする学部学科や系列を決められる大学▼ 国立大学・東京大学1〜2年生は全員教養学部に所属し、3年生から学部学科に所属します。「進学選択」(または「進学振り分け」「進振り」)といわれる制度です。3年生からの学部学科は入学時の文科一類〜三類、理科一類〜三類と大まかには対応する(例えば法学部は文科一類からの受け入れ枠を多く持つ)ものの、対応していない学部学科に進むことも可能です。文転・理転もできます。参考:東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部|進学選択に関する情報 東京大学|一般入試Q&A・北海道大学総合入試で入学した生徒は、1年次は文系と理系に分かれて全学教育科目を履修し、2年次進級時に進みたい学部・学科を選択します。基本的に文系・理系の枠はそのままですが、条件を満たせば系列移行も可能です。参考:北海道大学|入学案内▼ 私立大学・国際基督教大学(ICU)入学後は全員教養学部に所属し、2年生の終わりに専修分野(メジャー)を決めます。文系理系両方を含む31の専修分野があり、「SINGLE MAJOR」「DOUBLE MAJOR」「MAJOR + MINOR」の3通りの選択方法を選べます。参考:国際基督教大学(ICU)|入学から卒業までの流れ 国際基督教大学(ICU)|メジャー② 学部は決まっていて、後から自分の専攻する学科や系列を決められる大学▼ 国立大学・京都大学:総合人間学部、文学部、教育学部、法学部総合人間学部、文学部、教育学部・・・2年進級時に主専攻を決め、学系に分属されます。(教育学部は3年進級時)法学部・・・学科分けやコース分けがなく、自分の興味関心に沿って履修できます。参考:京都大学 総合人間学部 京都大学 文学部 京都大学 教育学部 京都大学 法学部・名古屋大学:文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部各学部1年時は共通の授業となり、2年進級時に専門分野を選択します。参考:名古屋大学|入学案内2022・東京工業大学学部と大学院を統一した「学院」制を採用しています。学部1年目は各学院に所属し、2年生進級時に系を選択します。参考:東京工業大学|学院・系・コースの関係▼ 私立大学・早稲田大学:文学部、文化構想学部、基幹理工学部、商学部、国際教養学部文学部、文化構想学部・・・2年生進級時に論系(専門課程)を選択します。基幹理工学部・・・学系単位で入試を実施し、2年進級時に学科を選択します。(学系と学科はある程度対応しているものの幅があります。)商学部・・・学科の枠なく履修可能。3年生から始まるゼミによってトラック(専門)が決まります。国際教養学部・・・2年生前半までに自分の研究テーマを自分で決めるスタイル。特定のコース設定に縛られず「テーマ」を中心とした勉強ができます。参考:早稲田大学 文学部 早稲田大学 文化構想学部 早稲田大学 基礎理工学部 早稲田大学 商学部 早稲田大学 国際教養学部・慶應義塾大学:文学部、理工学部文学部・・・2年進級時に17の専攻から自分の所属するものを決めます。理工学部・・・入試次に学門A〜Eから選択して受験。2年進級時に学科分けを行います。(学門ごとに学科への受け入れ枠が決まっています。)参考:慶應義塾大学 文学部 慶應義塾大学 理工学部進路選定に大事なこととは進路を決定するにあたって大切なことは、「自分で選び、自分で決定する」ことです。自分の将来に関わる大きな決定ですから、自分が心から納得できる選択にしましょう。「自分の偏差値的にこの大学がちょうどよかったから」「親や学校の先生がこの大学を勧めるから」といった要因で決めてしまうと、自分のやりたいことや興味があるものではなかった場合に後悔してしまう可能性があります。もし「好きなことが多くて決めきれない」「もっと色々なことを知ってから自分の将来を決めたい」「まだ自分が何がしたいかはっきり決まっていない」というときは、あえて専攻をはっきり決めず「Late Specialization」がある学校・学部に進学するのもよいでしょう。それぞれの専門分野についてより深く知った上で判断できますし、進路について考えられる時間も長くなります。自分が納得できる進路を見つけられる可能性が高まるでしょう。入ってからミスマッチしないために大学に入ってからのミスマッチを防ぐには、大学で学べる内容や、自分の興味関心などについて考えて志望校を決めることが重要です。これは、大学に進学してから専攻を決める場合でも同じです。というのも、学校や学部によって学んだり専攻したりできる内容が違うからです。また、「Late Specialization」と一口に言っても、大学によって専攻決定の時期や副専攻のあるなしなどそのシステムは違います。「後から専攻を決めるから、今は考えなくていいや」と適当に進学先を決めてしまうと、「Late Specialization」であっても後から「自分が学びたい内容がなかった」「思ったように勉強ができなかった」とミスマッチを引き起こしてしまう可能性があります。もちろん明確に決めるのは大学に入ってからで問題ないのですが、大まかに「自分がやりたいことの軸」や、「興味のある方向性」を洗い出して志望校を決めることが大切です。進みたい大学が決まったら、次に行うべきは「自分の現在位置」と「志望大学に合格するために必要な学力」を見極め、そのギャップを埋める作業。スタディカルテLabでは、進路相談を重ねながら、一人ひとりの学習傾向を踏まえ相性の良い受験校を選定するサポートをしています。また、「志望校に合格するための道のり」を専門の講師がオーダーメイドで作成します。あなただけの最短距離を見つけられるので、効率よく志望校合格に向かって進めますよ!進路や学習に関するご相談があれば、LINEからお気軽にお声がけください。