受験の天王山といわれる夏、受験生にとっては勝負どころの季節がやってきました。夏の勉強方法によって大学受験が決まると言っても過言ではありません。では、具体的に何に気を付けて勉強するべきなのでしょうか。今回の記事では、国公立医学部受験にフォーカスをあて、「夏以降にはまりやすい2つの落とし穴」について解説していきます。この夏を後悔なく過ごすためにも、特に注意すべきポイントを知って、成功に繋がる夏の対策を立てていきましょう!① 「全教科を満遍なく勉強」は要注意!夏によくある失敗の1つが、どの教科も基礎学力が完成されていないうちから全ての科目を満遍なく勉強しようとすることです。医学部受験で確実に合格するレベルの生徒の中には、早期に入試基礎力を完成させた上で、過去問演習と課題分析に1年以上かけている人も少なくありません。もしあなたがこのような状況になく、これから挽回して医学部合格を掴もうとしているのなら、遅くても夏の終わりまでに主要科目の基礎学力を完成させることを最優先としてください。なぜなら、主要科目の基礎学力が固まっていないと、過去問研究を進められないからです。秋以降に十分な過去問研究を進めていくために、ある程度過去問に手が出せる状態になっておかなければいけません。また、医学部入試では英語・数学・理科の配点が高く設定されていることが多く、3教科の配点が全体配点の80%を超えている大学も珍しくありません。そのため、英語・数学・理科に穴があると、そもそも医学部受験の土俵に上がれなくなってしまう危険性があるのです。主要科目を固めることができれば、秋以降の過去問演習によって目標点との差が具体的に分かり、自分が何を勉強すべきかを掴めるため、今後勉強を進めていく上での精神的な安定にも繋がります。主要科目の対策を優先し、秋以降の受験対策の土台を作っておきましょう。② 志望校の入試傾向は早めに把握!2つ目の落とし穴は、「医学部受験は難しい」というイメージだけで、志望校の出題傾向を把握することなく、難問ばかりに手を出すことです。ひとことで「医学部受験」と言っても、その傾向は大学によって多種多様です。自分の志望校がどのような傾向の問題を出すのか、早いうちに知っておくことが大切です。スタディカルテLabでは、医学部の入試傾向を大きく4タイプに分類しています。医学部入試は大学によって出題傾向が様々ですが、この4タイプの分類ごとにおおまかな対策を考えることができます。そこで、まずはあなたの志望校がどのタイプに該当するのか?を考えてみてください。赤本などで自分の志望校がどのタイプかを掴んで、これからの学習計画を立てましょう。特に現役生は、「自分にはまだ早い」と思い、過去問の確認を後回しにしがちなので要注意です。それでは、実際に医学部の入試傾向4タイプを見てみましょう。自分の志望校がどれに当てはまるか参照してみてください。< 医学部の入試傾向4タイプ >1.旧帝大型大学例: 東京大、京都大、大阪大、名古屋大、東北大など旧帝大型の入試では、多くの場合、2次試験で他学部との共通問題が出されます。ただ、医学部以外の学部も偏差値が高いため、全体として問題の難易度も高い場合が多く見られ、知識力よりも思考力が問われる問題も多い傾向にあります。大学によっては2次試験で国語が課されることも多く、その場合は早期の対策が必要です。旧帝大型を志望している場合は、大学別の模試を受けると、母集団や出題傾向が実際の入試と近いので有意義でしょう。2.高得点型大学例: 信州大、琉球大、香川大などこのタイプは、入試標準レベルの問題で高得点を取ることが求められます。共通テスト対策と2次対策どちらも必要ですが、特に入試標準レベルを速く正確に解くことが求められる大学群です。しかしながら、基本ができていないのに難しい入試問題集に手を出している受験生が毎年あとを絶ちません。時間をかけて難問を完答する学力よりも、苦手をなくし、時間内にミス無く解き切る力が鍵となります。2次試験は高得点争いとなるため、共通テストで失敗した場合に2次で逆転することは基本的に困難です。他のタイプに比べ、共通テストの重要度が高い点に注意して、対策を進めましょう。3.単科医科大型大学例: 東京医科歯科大、京都府立医科大、滋賀医科大、奈良県立医科大(後期)などこのタイプの入試問題は、非常にハイレベルといわれています。大学によっては教科書の範囲を超えた知識も問われ、東大や京大よりも難易度の高い問題が出されることも。年度によっては、受験生の上位層でさえ5〜6割の得点率になることも多くあります。特定の科目で飛び抜けた学力があり、2次試験で差を付けることができれば、共通テストで多少失敗したとしてもビハインドを挽回できる可能性はあるでしょう。しかし、基本的には、共通テストでしっかりボーダーを超え、2次試験の難問でも取るべき問題を手堅く取る必要があります。4.特殊型大学例: 弘前大、秋田大、奈良県立医科大(前期)など最後は、1〜3のどれにも当てはまらない”特殊型”です。論述が多く出される、問題の出され方が特殊、面接の点数比率が高いなど、大学ごとの個性が強いタイプです。医学部入試における2次試験の受験科目は英語・数学・理科が一般的ですが、大学によっては理科や英語などが課されない場合もあります。その分、志望大学の傾向に特化した対策が効果的で、模試成績と合否結果がズレやすいのも特徴です。例えば、弘前大医学部は2次試験で学科試験がなく、総合問題と面接で500点もの配点があります。共通テストも理科の配点が高く設定されています。ギャンブル要素が大きいともいえますが、条件次第では、発展途上の生徒でも合格できる可能性があります。秋田大医学部は共通テスト重視です。2次試験は英語100点、数学100点、面接200点と、2次試験で理科が出題されないことも特徴です。その代わり、共通テストの理科の傾斜配点が他教科と比べて2倍となっています。奈良県立医科大は、前期と後期で出題傾向が大きく異なります。前期試験では、トリアージ(患者の重症度に基づいて、医療・治療の優先度を決定して選別をおこなうこと)を意識した入試形式になっていて、問題量が多く、簡単な問題の中に明らかに解きにくい問題が混在しています。「難問を解く」よりも「捨て問を見切る」ことが勝負ポイントとなります。以上、医学部の入試傾向4タイプをご紹介しました。このように、一概に「医学部入試」と言っても大学によって出題傾向や対策は大きく変わってきます。例えば、“高得点型”の大学を志望しているのに難問ばかり解く対策をしても、なかなか合格は見えてきません。例えるなら、陸上競技で短距離走の大会に出るのに、長距離走のトレーニングを続けてしまうようなもの。無駄にはならないとしても非効率な道になってしまいます。「医学部だから難しい」と漠然と決めつけるのではなく、自分の志望校の出題パターンを把握し、限られた時間の中で効率良く勉強することが大切です。傾向変化にも対応できる対策をとは言え、どれだけ傾向を掴んで対策を練ったとしても、出題傾向が変わることはあります。例えば、一部大学では2021〜2022年度の入試では数3があまり出題されず、数1A・数2Bを中心とした問題が多くなりました。これは、新型コロナウイルスの影響で高校での授業が十分にできなかったことが考慮された影響です。結果として、東邦大(医)、国際福祉医療大などでは数学が易化し、例年とは異なる傾向となりました。また、愛媛大(医)では受験科目に「総合問題」があり、2020〜2021年度は小論文と英語の融合問題といわれていました。しかし、3年目で傾向が変わり、多くの受験生が戸惑ったといわれています。これらも踏まえて2023年度の入試傾向を考えると、コロナによる一斉休校も実施されなくなってきたこともあり、過去2年間とは異なり例年のレベルに戻る可能性が高いと予想されます。揺り戻しにより傾向ががらっと変わる可能性はゼロではないため、優先順位を見極めつつ、確実に学習を進めていくことが必要です。いずれにせよ、志望校の情報を集め、他教科とのバランスも取りつつ秋以降の舵取りをすることが重要です。傾向対策は情報勝負の面もあるので、塾や学校などで誰かに相談してみるのも良いかもしれません。受験においては「出た問題で合格点を取り切る」ことが合格の条件です。大学によって入試傾向はありますが、その傾向が固定的なのか、あるいは傾向自体が頻繁に変わるのか、といった点も踏まえながら対策を立てる必要があります。自身の得意・不得意や志望校の入試傾向をしっかりと把握し、合格に向け実りある夏を過ごしましょう!スタディカルテLabでは、受験校の絞り込み方や、大学別の学習戦略の立て方などの相談も承っております。ひとりひとりの学力に合わせて学習プランナーが一緒に学習計画を設計し、合格まで導いていきます。受験に関する悩みがある方や、学習相談希望者は、スタディカルテLabのLINE公式アカウントを友だち登録し、メッセージでご相談内容をお送りください。順次お返事いたします。