国際的に通用する大学入試資格である「国際バカロレア資格(IB)」。海外の高校や大学への留学を考えているのであれば、耳にしたことのある人も多いでしょう。今回の記事では、国際バカロレアとは何なのか、資格を取得すると大学受験においてどのように利用できるのかを解説します。国際バカロレアとは国際バカロレア(International Baccalaureate。略称IB)とは、国際バカロレア機構が提供する、世界共通の教育プログラムのことです。1968年に設置され、スイスのジュネーブに本部をもっている非営利団体である国際バカロレアが、国際的視野を持つ人材の育成と、国境を超えて通用する大学入学資格を作ることを目的として始めました。国際バカロレアでは、具体的には以下の「IBの学習者像」として表される10の人間性を兼ね備えた人物を「国際的視野を持つ人間」と考えています。探求する人知識のある人考える人コミュニケーションができる人信念を持つ人心を開く人思いやりのある人挑戦する人バランスの取れた人振り返りができる人出典 : IBとは | 文部科学省IB教育推進コンソーシアムただ単に知識がある、外国語ができるといった観点ではなく、問題解決に向けての探求と、多様な文化への理解と尊重ができる人間こそが平和な世界を作れる、国際的な人物であると国際バカロレアでは捉えられています。国際バカロレアのプログラムは4つある国際バカロレアには、年齢に合わせて4つのプログラムがあります。・PYP(Primary Years Programme):3〜12歳幼稚園〜小学校に相当。精神と身体両方を育むことを重視するプログラム。・MYP(Middle Years Programme):11〜16歳。小6〜高1に相当。学習内容と社会の関わりを学ぶことを重視するプログラム。・DP(Diploma Programme):16〜19歳高校に相当。大学入試資格取得を目的とし、学びを深めるプログラム。・IBCP(Career-related Programme):16〜19歳高校に相当。学校卒業後、就職や専門学校に進む人のためのキャリアプログラム。日本にこのプログラムを実施している学校は現在ありません。このうち、大学入試に関わってくるのはディプロマ・プログラム(DP)と言われる部分です。ディプロマは原則として英語・フランス語もしくはスペイン語で授業が実施されますが、学校によっては一部科目を日本語で受講可能です。国際バカロレア(IB)プログラム認定校国際バカロレアプログラムは世界159か国以上の国や地域の、約5,400校において実施されています(2022年3月31日現在)。日本における国際バカロレア認定校には、以下の2つの種類があります。学校教育法第1条に規定されている学校(1条校)インターナショナルスクール1条校とは、文部科学省の学習指導要領の規定に従ったカリキュラムが組まれている学校で、いわゆる一般的にイメージされる「学校」です。それに対しインターナショナルスクールとは主に日本に住む外国人の子供を対象に発展してきた学校で、海外のカリキュラムに基づいて教育が行われます。経営母体やルーツとなる国によってカリキュラムはさまざまで、英語など、外国語で授業を受けられるのが特徴です。基本的にインターナショナルスクールは学校教育法第1条には当てはまらない事が多く、卒業しても日本の小学校や中学校の卒業資格を得られないケースが多くあります。ただし高校の場合は、国際バカロレア資格を手に入れる、国際的な評価団体に認定された学校を卒業する、高認試験を受ける、などで日本の大学の入学資格を得られます。なお、2022年3月31日現在、日本国内のディプロマ実施校は61校あり、そのうち1条校は39校、1条校・インターナショナルスクールを合わせた日本語ディプロマ実施校は30校となっています。現在文部科学省は国際バカロレア認定校を増やすことに力を入れているため、これからも認定校は増えていくでしょう。国際バカロレア資格(DP)を取得するには国際バカロレア資格を取得するには、「国際バカロレア認定校でディプロマプログラムを受ける」だけでなく、「年に2回行われる試験に合格する」必要があります。ディプロマプログラム(DP)のカリキュラムディプロマプログラムの生徒は、以下の6つのグループに属する科目から1科目ずつを選択し、2年間かけて学びを深めます。《教科グループ》グループ1:言語と文学(母国語)グループ2:言語習得(外国語)グループ3:個人と社会グループ4:理科グループ5:数学グループ6:芸術教科科目には「上級レベル(HL)」と「標準レベル(SL)」があり、自分の興味関心や大学で進みたい方向に合わせ、3科目を上級レベルで学習します。例えば、「グループ4:理科」には、生物、化学、物理、コンピュータ科学などの教科科目が属しているので、将来的に化学の道に進みたい人は化学のHLを選択するといった具合です。文系も理系も、まんべんなく勉強しなくてはならない点も国際バカロレアの特徴です。また、それとは別に必修で「コア」という科目も学ばなくてはなりません。《コア科目》課題論文(EE)知の理論(TOK)創造性・活動・奉仕(CAS)日本の「覚える」ことが中心の学校の授業と違い、国際バカロレアのカリキュラムでは「自分で問題点を見つけ」「解決法を考える」ことが重視されます。基本的に全て英語、あるいはフランス語かスペイン語で授業が行われますが、一部の学校では日本語でのプログラムも実施されています。ただし、その場合でも6科目中2科目は英語で履修しなくてはなりません。国際バカロレア資格(DP)の合格ライン国際バカロレア資格を取得するには、2年間の学校の内部評価と国際バカロレア試験、両方の総合評価で規定の点数以上を取らなくてはなりません。日本の1条校に通っている場合は、3年生の11月に試験が行われます。点数は1科目につき7点が満点、更にコア科目で3点分の合計45点満点。24点以上を取ることで国際バカロレア資格が取得できます。国際バカロレア資格は大学入試にどう役立つのか国際バカロレア資格は実際に入試においてどのように役立つのでしょうか。日本国内と海外、それぞれについて解説します。日本国内の大学に進学する場合国際バカロレア資格を持っている18歳以上の人は、出身が1条校かどうかに関わらず日本の大学への入学資格を得られます。国際バカロレアを入試資格として活用する場合は「国際バカロレア資格保持者のみを対象とした入試がある」あるいは「総合型選抜の出願資格の1つとしている」ケースが多く、スコア基準や履修している科目の指定がない場合もあります。導入している大学数がまだ60校程度であり、また一部学部にしか出願できない大学が多いことがネックですが、国公立大学や偏差値上位の大学での採用が多く、これからもその数が増えていくことが予想されています。例えば、東京医科歯科大学医学部医学科の特別選抜Ⅰ(国際バカロレア選抜)では、以下の科目を履修していることが出願要件となっています。日本語A(HL/SL)or日本語B(HL)数学:解析とアプローチ(HL)or数学:応用と解釈(HL)物理・化学・生物から2科目(いずれか1科目はHL)国際バカロレアのスコアと志望理由書や課題論文(EE)などの出願書類と小論文、面接の合計得点を総合して合否が判定されます。海外の大学に進学する場合国際的な大学入学資格である国際バカロレア資格は、海外の大学の入学資格としても広く使えます。取り扱いは国によって異なりますが、多くの場合は履修科目やスコア基準が指定されており、プラスでTOEFLやIELTSが要求されます。また、大学によっては入学後に国際バカロレアのスコアによって単位をもらえることもあり、活用できれば在学中の勉強や金銭面での負担を減らせるでしょう。例えば、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでは入学時の最低要求スコアは34点です。ただし学部によって条件は異なり、History BAというコースでは以下がエントリー要件となっています。必要スコアは38HLで履修した科目(歴史HL6点を含む)の合計点が18以上5未満のHL科目がないこと出願資格は厳しいですが、国際バカロレア資格のスコアのみで出願可能なため、IB生からは人気の高い大学です。国際バカロレア(IB)は帰国子女や留学を考えている人に適している国際バカロレア資格は、世界共通の教育プログラムであり、修了することで国際的な大学入学資格が得られます。日本の勉強と違い「自分で考え」「発信する」ことが重視される難易度の高いプログラムですが、海外大学の受験を考えている人に向いていると言えるでしょう。日本の大学でも入試に採用する学校は増えてきているので、高校卒業時により多くの進学先候補を手に入れられます。将来、留学を考えている人は、国際バカロレアで学ぶことも検討してみるといいかもしれません。続いては、スタディカルテLabで国際バカロレア対策に特化した指導を受け、見事に化学で満点を達成した、Fさんへのインタビューをご紹介します。実際に国際バカロレアの資格取得にどんな苦労があったか、大学受験に向けてどのような対策をしたかなどについて、お話を伺いました。▼ 体験授業のお申し込みはこちらから。お待ちしております!